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どんなに上手に隠れても(岡嶋二人・講談社文庫)

84年の初期の作品。
タイトルからはあまり想像できない(笑)、派手な仕掛けが満載の
誘拐モノです。(タイトル、地味ですよねぇ?^^;)

誘拐の舞台は白昼のTV局。
誘拐されるのは、5日後に発売を控えた新製品のCMキャラを努める
売り出し中の若手女性歌手・結城ちひろ。

スポンサーの敏腕宣伝マン、パパラッチ的な週刊誌のカメラマン、
芸能プロダクション、競合のCMクリエイター・・・
いかにもギョーカイっぽい人たちが自分達の利潤・利益・保身のために
絡まり合う中、1億円の身代金受け渡し劇が始まります。

いや~、なかなかみなさん、えげつないです。
特にゼネラルフィルム宣伝部の長谷川。
ちひろの誘拐事件を無料のパブリシティと捉えて利用する狡猾さ&大胆さは
こんな人、ホントにいたら大変だわ・・と思う反面、
広告マンならこんな立場になったら野心がメラメラしちゃうのかも~、とも。

身代金の受け渡しトリックも、幾重にもあっと驚く仕掛けがあって
ヘリが登場したり、いつの間にか身代金が消えていたり・・と、
TVっぽい派手な手口で、地味になりがちな身代金受け渡しのシーンが
映像で見ているような感じで楽しめます。
なにしろ、物語のほとんどはこの「受け渡し」シーン。
言い換えれば、いかに「受け渡し」シーンをエンターテイメントに仕立てるか、
という作品といえるかも。

地道に捜査する矢津刑事がなかなか渋かったですが、
もうちょっと警察も頑張らないとね、って感じはありました^^;
彼が「テレビを逮捕してしまいたい」と思わず口走ってしまう心境は、
よく分かる気がします。

野心家の広告マンが失うものは何も無い状態になったとき、
どう変わっていくのか、というなかなか読み応えのあるサイドストーリーもあり。

一つ残念だったのは、後半に起こる殺人事件。
殺人が起こらない誘拐モノでも良かったんじゃないかなぁ~、と思います。
まあ、それだけあーゆー業界の人は蛇のように執念深く陰湿・・って
ことなのかな。


解説は東野圭吾さん。
暗記するほど繰り返し読んだ名作、と絶賛してました^^

# by marin_star | 2007-01-24 22:01 | 岡嶋二人  

The MANZAI 1 (あさのあつこ・ピュアフル文庫)

あさのあつこさん、初の作品です。
娘用に購入したんですが、面白そうなので借りて読みました^^;

中学1年の夏に不登校になり、父と姉を交通事故で失った歩。
転校した中学で、突然同級生の貴史に「俺とつきおうてくれ」と迫られる。
すわっ、ホモ??と焦る歩と、熱烈に迫る貴史の会話が、
いつの間にか絶妙な掛け合いになっているところが
物語の行く末をさっそく期待させます。
だって、おつきあいして欲しいのは漫才のコンビとしてなんですから。(笑)

不登校・肉親の事故死から、「普通でいること」を頑なに演じ続けてきた歩は、
そんな自分に
「初めて会ったときからピンときた。俺とおまえには才能がある!」と
心の中にずんずん入り込んでくる貴史にとまどいを隠せない。

そんな二人が学園祭の劇「ロミオとジュリエット」で、
貴史がロミオ、歩がジュリエットに扮して漫才をやることに!

クラスみんなと協力しながらマジメに漫才劇(?)を作り上げていく中で、
歩の心のカセが次第に溶けていきます。

普通じゃない=ダメなこと、ではなく、
普通じゃない=特別なヤツ ってことなんだね。

ツライことも悲しいことも笑い飛ばしてしまう強さ、
自分の気持ちに素直に生きる大切さ、
感情をぶつけ合う本当の友情などを
ユーモアたっぷりのリアルな少年たちの姿をとおして、
爽やかに描いています。


2・3・・・と続いている作品なので、続きもぜひ読んでみたいです。
娘もすでに本屋へ行く日を楽しみにしているようです^^
あさのあつこ×重松清さんとの巻末特別対談もなかなか面白かったです。

# by marin_star | 2007-01-16 23:13 | あさのあつこ  

焦茶色のパステル(岡嶋二人・講談社文庫)

封印中の「おかしな二人」を読むための岡嶋作品その2(笑)。

やはりまずはこれを読まなきゃ、ということで、
事実上のデビュー作ともいえる競馬ミステリのこの作品。

競馬場には昔一度だけ行ったことがありますが、
(それもレースのないとき・・^^;)
全く何も知識の無い私なので、正直競馬ミステリという分野は
読まず嫌いの苦手ジャンルでした。

でもこの作品は、被害者の妻が競馬素人で、
競馬情報誌記者の女友だちとともに事件の真相に迫る・・という形で
展開していくので、かなり読みやすかったです。
単なる殺人事件かと思いきや、競馬界を揺るがす重大な陰謀へと
繋がっていきます。

84年の作品ですが、作品のトリックや展開にもほとんど古さは感じられず、
なかなか読み応えがありました。
ただ、やはりまだあまりこなれてないというか、軽妙な筆致ではなかったので、
あー、初期の作品なんだなぁ~、と(笑)。


第28回江戸川乱歩賞受賞作品

# by marin_star | 2007-01-16 21:36 | 岡嶋二人  

アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎・創元推理文庫)

2007年最初の(遅すぎだってば^^;)作品は、
伊坂さんの「アヒルと鴨とコインロッカー」!♪
この作品は昨年5月に単行本を購入してすぐ読んだんですが、
あまりの衝撃に何も書けず(何を書いても言葉が上滑りして
嘘っぽくなりそうで)、
ずっと心に温めていた作品です。
昨年末に文庫になったので、新年イチバンに購入して再読、
今度こそ、レビューにチャレンジです^^;
といっても、たいしたことは書けません。ご容赦ください・・・m(_ _)m


再読するとまた、スゴクよかったです。
もう、ラストは涙ボロボロです・・・
結末が分かっているのにまたこんなにジーンときてしまうなんて。。。
って感じです。
むしろ、2度目だからこそ、いろんな台詞に隠された本当の意味が
ずんずん心にたまっていって、河崎・ドルジ・琴美の3人の物語が
鮮烈に浮かび上がってきます。

引っ越したばかりのアパートの隣人・河崎に巻き込まれるように
本屋を襲撃してしまう僕(椎名)の目線で語られる現在と、
ペット殺しの犯人に付け狙われることになってしまった琴美の目線で
語られる2年前の物語。

この「現在」と「2年前」が交互に語られ、ものすごく緻密な計算のもとに
大きくうねりながらラストへ向かっていく構成が、また素晴らしい。
途中参加の椎名に現在を語らせることで、いろいろな謎が重なって
読者も一緒に「??」と謎解きに夢中になってしまうし、
琴美の行く先が暗示されている中で2年前の物語が語られるので
もう気が気でない。お願いだから何とか回避して!と心で叫びながら
読んでいました。(涙)

ブータン人で生まれ変わりを信じているドルジ、
寝た女の誕生日で365日を埋めるという野望を持つ美貌の持ち主・河崎、
ペットショップ勤務でドルジと暮らす琴美。
この3人のそれぞれの心の痛みや哀しさ、切なさ、生き方に
本当に胸が震えます。

ミステリとしても秀逸です。
初読のときは本当に「えぇっ!?」と驚愕しましたよ。
これは初読で見破れた読者はいないのではないでしょうかね^^;
どの台詞もエピソードも本当に無駄なものは何一つ無いので、
サラッと読み流さずに心して読むことをおススメします。
といっても、どのエピソードも(本屋襲撃もシッポサキマルマリも鳥葬も
動物園もボブ・ディランもアヒルと鴨もクロシバもetc...)
伊坂さんならではの存在感のあるエピソードなので
見逃したりできないですけどね(笑)



文庫版では、琴美の描き方が少し違っていましたね。
ペット殺しと思われる3人への捨て台詞にあれ?と違和感を感じたので
単行本を引っ張り出して確認・・・^^;
その後も気になる場面がいくつかあって、そのたびに確認しちゃったのですが、
ずいぶん改稿していましたね。
私は、身に迫る恐怖をなかったことにしたくて警察を頼れなかった
強がりで臆病な単行本の琴美のほうが好きでした。



第25回吉川英治文学新人賞受賞作
2004年度「このミス」国内第2位 他受賞多数

2007年初夏映画化(濱田岳・瑛太・関めぐみ・松田龍平・大塚寧々)

# by marin_star | 2007-01-16 20:42 | 伊坂幸太郎  

メリーゴーランド(荻原浩・新潮文庫)

荻原さんのひさびさの文庫新刊♪
くすくすっと笑えてちょっとしんみり・・・
実はけっこう深いお話でしたね~。

過労死続出のメーカーを辞めてUターンし、公務員となった啓一。
愛する家族と平穏無事な生活を送っていたかと思ったら、
超赤字のテーマパーク再建の推進室へ移動になり、
ヤル気のない同僚やとんでもない天下り理事たちに囲まれながら、
再建のための一大イベントに向けて孤軍奮闘しなければならなくなった・・・。

孤軍奮闘・・・といっても、頼りになるんだかむしろ爆弾を抱えてしまったのか
分からないような、強烈キャラの外部スタッフが次々と加わってきて、
もー、アクが強いのなんの・・・って(笑)
ふたこぶらくだの劇団員たちや、宮大工修行中のシンジとその取り巻きの
「鉄騎隊」の若者たち・・・ものすごい魅力あふれる面々が
パワフルにぶつかり合いながらイベント当日に向けて徐々にそのパワーを
集結させていきます。
こういうのが荻原さんの上手いところで、思い切り笑わせてくれるし、
一気に読ませる面白さはやっぱりさすが^^

「オロロ~~」や「なかよし小鳩組」を思わせるテーマですが、
ガハハっと笑えた「なかよし~~」よりも、もっと苦くてシニカルです。
一大イベントが成功するか否かの盛り上がりまででハッピーエンドかと
思いきや、そこからがまさにこの本の読ませどころだったわけで、
たたみかけるように切なく苦い急展開に。
(ネタバレになっちゃうので、あんまり詳しく書けないんですけど・・・^^;)

お父さんの仕事を作文に書く、という息子の言葉に自己問答する啓一の姿や、
劇団ふたこぶらくだの「豆男」の話、不思議の国のアリスの話が
物語に上手く絡んで、何も起こらない平穏無事な生活に満足していた啓一に
「何か起こさなきゃ何も始まらない」前向きな気持ちを起こさせます。

ラストは荻原さんらしく、堂々と前を向いた主人公が爽やかで、
素敵なラストでした。

# by marin_star | 2006-12-09 23:04 | 荻原 浩