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アーモンド入りチョコレートのワルツ(森 絵都・角川文庫)

「子供は眠る」
 ~ ロベルト・シューマン<子供の情景>より
「彼女のアリア」
 ~ J・S・バッハ<ゴルドベルグ変奏曲>より
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」
 ~ エリック・サティ<童話音楽の献立表>より

という、ピアノ曲を主題に盛り込んだ、素敵な3篇の短編集です。

う~~ん、さすが、絵都さん♪
ものすごく素敵な本です。

夏休みの恒例となった親戚関係の少年たちが過ごす別荘での2週間、
成長していくがゆえに失ってしまう切ない大切なひととき、
ちょっぴりほろ苦い想いを描いた「子供は眠る」。

別荘の持ち主で最年長の章くんには絶対的な命令権があり、
逆らえば来年から呼ばれなくなる・・・という暗黙の了解の中、
章くんの趣味で毎夜無理やり聞かされるのが、なぜかクラッシック。
昼間思いっきり海で遊んだ少年たちには、就寝間際に聞かされるクラッシックは
まさに地獄の子守唄同然で、20分足らずの小曲集でさえ、最後まで聞けずに
みな爆睡してしまう。(笑)

毎年のように繰り返されてきた別荘でのさまざまな出来事。
なのに、急に章くんへの反抗心がむくむくと芽生え、
この夏はいつもと違ったものになってしまう。

成長期の少年たちは、いつまでも同じ位置にとどまっていられなくて、
いつのまにか立場が逆転していたり、気持ちがすれ違ったりしてしまうんだよね。
もっと正直に素直に話をしていれば分かり合えたのに・・っていう
エピソードの数々が、少年たちの等身大の姿で重なっていきます。

どうして絵都さんは、こんなに少年少女の心を映し出すのが
上手なんでしょうね。


「彼女のアリア」のテーマ曲「ゴルドベルグ変奏曲」は、
バッハが不眠症患者のために作った曲なんだそうです。
不眠症の僕は、古い校舎の音楽室でこの曲をピアノで奏でる彼女に
出会い、「私も不眠症なの、もう2ヶ月も・・・」と打ち明けられて
お互いを励ましあっていく関係に。

しかし、彼女と出会って数週間で彼の不眠症はパタリと完治してしまい、
なかなかそれを言い出せないまま、何ヶ月も寝ていないのに肌ツヤもキレイな
彼女への疑問がふと湧いてくる。
本当は心がつながっているのに、不眠症という共通項でしかつながっていないと
思い込み、壊したくないと願う切ない気持ち、純粋さ。
そして、恋っていいなぁ~と思わせるラスト。ちょっとウルッときてしまいました。


表題作の「アーモンド入りチョコレートのワルツ」、
これを読むと、ものすごくワルツの音楽を聴きたくなります。
文字の間から軽やかなワルツが聞こえてくるような気がしてしまうほど、
踊り出したくなるような音楽の素晴らしさが伝わってきます。

おしゃれな洋館に住む絹子先生にピアノを習っている奈緒と君絵。
練習嫌いの奈緒には手首を鍛える練習と言って枕投げを一緒にやってくれたり、
ピアノ教室なのに「あたしはうたうのが好き」という君絵には
好きに歌をうたわせたり・・・
はちゃめちゃだけど、音楽を(特にサティのワルツを)心から愛している
絹子先生。
そんな先生のところにある日不思議なフランス人のおじさんが住みつき、
楽しくて奇妙でちょっとハラハラするお話が始まります。
ワルツの軽やかなステップにのせて。
絹子先生の愛するサティにどこかしら似ているおじさんと、
君絵のキャラがものすごく強烈&愛おしい。

音楽を愛する楽しさ、人を愛するやさしさを全身で浴びるように味わえる、
そんなお話です。


3作とも、主題の音楽との絡ませ方が全くあざとさもなく自然で、
音楽への愛着だとか愛情・慈愛みたいなものが満ち溢れています。
あー、絵都さんってホントにいいなぁ~^^。
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by marin_star | 2006-11-27 22:27 | 森 絵都  

指輪をはめたい(伊藤たかみ・文春文庫)

前の彼女にふられてから、30歳になるまでに絶対結婚してやる!と
心に決めていた「僕」。
30歳の誕生日を目前に、スケートリンクで転倒して頭を強打したショックで、
誰にプロポーズしようとしていたのか、という肝心な記憶だけがすっぽりと
抜け落ちてしまった!!
しかも、交際している女性は3人、
はたして「僕」は誰にプロポーズしようとしていたのか・・?

・・・とまあ、こんな感じのツカミで始まり、誰と結婚しようとしてたか
忘れてしまうくらいなら、誰とも結婚しないほうがいいんじゃない?
って思うんですが、
どうしてもふられた彼女を見返してやりたくて30歳までに結婚する、と
頑なになる「僕」。こどもっぽいね~~~~^^;

しかも、同時に3人と付き合ってて、それぞれにイイところや悪いところを
冷静に比較してるところなんて、最低だね。
こんな男、絶対結婚したくないっ!!!
しかし、付き合ってる女も女で自分勝手だったりマイペースだったり
ものすごく神経質だったり・・・と揃いも揃って、
コレ、3人ともやめといたほうがいいんじゃない?って感じ。

なんかねー、どうなったっていいんじゃない~?って
かなりダレた気分で読んでいくと、
ちょっと変わった女の子が絡んできたりして、またどんどん泥沼化していって、
やっぱり最後までぐずぐずなわけ。
もう、あきれるくらいに幼稚でバカな男だね。
世の中の30前の男がみんなこうだったら、泣けてくるよ。
あまりに情けなくて、情けなさを通り越して笑っちゃいます。

でもね、いるよなー、こういうヤツ。
男も女もどっかしらこんな部分を持ってるのかも。

ラストはちょっと怖い。
ダラダラで終わるのかと思ったら、こうくるか!って展開で、
あんまり納得いくラストではなかったと思います。
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by marin_star | 2006-11-24 22:39 | 伊藤たかみ  

タイトルマッチ(岡嶋二人・講談社文庫)

久々の岡嶋作品。
井上夢人作品を読んでしまうと、どうも小粒に感じてしまうので、
なかなか購入に至らなかったんですが、「おかしな二人」を購入してしまって
現在封印中なため、また少しずつ読んでみようかな、と。
(「おかしな二人」は岡嶋作品のネタバレ満載なんですよね・・・^^;)

ボクシングの世界タイトルマッチ、二日前。
挑戦者・三郎のセコンドであり義兄にあたる元世界チャンプ・最上の
10ヶ月の息子が誘拐された。
犯人の要求は「タイトルマッチでノックアウトで勝て」。
負け試合を要求する八百長ではない「勝て」という犯人の狙いは何か?

タイムリミットが容赦なく近づく中、捜査は難航、しかも三郎は大事な右の拳を
怪我してしまう大ピンチ。
赤ん坊のわが子を誘拐された最上の苛立ち、不安、犯人への怒り・・・といった
抑えきれない熱い激情、そして憔悴していく妻とのやりとりなんかが、
ものすごく上手いなぁ~、と。
ちょっとした会話に、夫婦間のほろっとさせる信頼感が滲み出てたり。

そして、ただ緊迫しているばかりではなく、クセのある登場人物たちがみな、
ちょっとユーモラスで人間味があってとても魅力的です。
(無意識のうちに最上が吹いていた口笛のメロディが「たんたん狸の~~」
だったり。)
最上はもちろん、怪我をしながらも試合に臨む三郎も、
三郎が挑戦する相手・ジャクソンも、三郎の怪我を治療する女医さんも、
みんないいキャラしています。

そんな素晴らしい人物描写と、タイトルマッチに向けて刻々と迫る
タイムリミットとがものすごく上手く絡んでいて、ピリピリとした緊迫感のある
ストイックなボクシングの世界を舞台にしたこの作品の魅力が、
存分に楽しめたと思います。

ボクシングは普段全然興味のない私でも、裏の世界まで分かりやすく、
犯人の動機や心情もなるほど、と納得がいき、面白かったです。

展開としては、やっぱりね。。。というところもかなりあったり、
犯人の残虐さと甘さのバランスがちょっと悪かったり・・・という
残念なところもあるにはありましたが、
84年の作品という古さを感じさせないところはスゴイです。

業界では「人さらいの岡嶋」と呼ばれるほど誘拐をテーマにした作品の
多い岡嶋さん。もともと「誘拐」ものが好きな私、「99%の誘拐」も面白かったし。
・・・ということで、今後もまずは「誘拐」ものから岡嶋作品を読んでいこうかな^^
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by marin_star | 2006-11-23 23:00 | 岡嶋二人  

あくむ(井上夢人・集英社文庫)

この本、ホラー短編集・・・ということでずっと敬遠してたんです。
近所の本屋には全然置いていないし・・・。
先日、ちょっと遠出したときに立ち寄った本屋で発見♪
コレを逃したらいつ買えるかわからない!と思い、購入。
ドキドキしながら(めっちゃ怖かったらどうしよう・・・と)、読みました。

怖いです。ものすごく不気味な話が5篇。
でも、私が苦手なタイプ(怪談っぽい感じとか)ではなかったので
怖かったけど、面白かった!

ディスカウントストアで何気なく買ってしまった盗聴機にのめり込み、
盗聴で出会った女性への異常な執着愛を持った男の顛末を描いた、
「ホワイトノイズ」。

交通事故で運び込まれた病院で、失明を宣告され取り乱す画家の
希望と絶望をミステリ仕立てにした巧みな「ブラックライト」。

自分は代々伝わる特殊な「種」=吸血鬼であると思い込んだことから起こる、
悲劇の「ブルーブラッド」。

両親の期待を裏切らずに優等生のレールを歩いてきた兄と落ちこぼれの弟。
ある日、兄の体に不気味な白い筋が増殖を始め・・・「ゴールデンゲージ」。

エキストラのバイト中になりゆきでキスしてしまったミライの見る夢が、
必ず僕の現実に起こる・・・。偶然か?予知夢なのか?
夢と現実がごっちゃになる恐怖に満ちた「インビジブル ドリーム」。

どの作品も、シュールでヒヤッと背筋が凍るような、
まさに「悪夢」な話です。
どこからどこまでが夢なのか、現実なのか、妄想なのか・・・
「悪夢」なら早く覚めろ!・・・・そんな悲痛な叫びや、あるいは
その悪夢の中に身を委ねて現実から逃れ、均衡を失った不気味な薄笑いが
聞こえてきます。

少し軽めの「ホワイトノイズ」から始まって、1篇ごとに不気味さが
凄みを増していく、5篇の構成も見事。

現実と非現実の境目が分からなくなる恐怖・・・
これ、井上さんの得意技ですよね。
さすが、です。
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by marin_star | 2006-11-23 21:53 | 井上夢人  

ミカ×ミカ!(伊藤たかみ・文春文庫)

ミカ!」の続編です。
小学生だった双子のミカとユウスケは中学生になり、
ちょっぴり大人になりました。

オトコオンナだったミカが、
ユウスケの知らないうちに恋をして、しかもふられていた!

「女らしいってどんなん?」

制服のスカートだってあんなに嫌がっていたのに、
「お試しメイクセット」なんて買っちゃって、リップを塗るミカ。

ユウスケ、戸惑っちゃうよね~^^;
女のコのほうが先に大人に近づいちゃうんだよね、この年代って。

でも、ユウスケは離婚したおかあさんの残していったレシピブックを
大事にしていて、おかあさん秘伝のセロリカレーを作ったり、
お父さんの新しい恋人に「おとうさんをよろしくお願いします!」なんて
言っちゃったり、ミカの恋が上手くいくように心配したり・・・
自分の恋のコト以外は、とても大人びていて、しっかりしている。

恋の面ではミカに先を越されたけれど、修学旅行を前に彼氏彼女を作ろうと
盛り上がる雰囲気の中で、ユウスケにも告白してくる女のコが現れたりして・・・
しかも、ちょっとイヤだなぁ~、って思ってた女のコからの告白。
純情で、でも「修学旅行までに・・」みたいな幼稚な打算、
こういうの、あったよねぇ~^^;

「シアワセ」と名づけたインコが、『幸せの青い鳥』になろうと、
ユウスケだけに聞こえるように耳にクチバシを突っ込んで、
ミカを幸せにしようと画策するのが、この物語のミソなんですが、
それがとってもキュートで切ないです。
ラストもじーんときちゃう。


大人が読んでもちょっぴり泣けちゃう、そしてほのぼのとした気持ちになれる、
ステキな本です。
ぜひ「ミカ!」とあわせてどうぞ。
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by marin_star | 2006-11-15 23:38 | 伊藤たかみ  

ミカ!(伊藤たかみ・文春文庫)

「あー、アタシ、なんで女に生まれてきたんやろ!なんでや!」
そんなふうに嘆く小学6年生のミカ。
プロレスやK-1大好き、サッカーもドッヂボールも男の子に手加減されるのが
大嫌い、スカートもいや、おっぱいなんていらない!・・・と
徹底したオトコオンナっぷりを発揮するミカがとっても魅力的。

そんなミカと双子のユウスケが、二人の日常と、
両親の別居・姉の家出などの家族の問題をやさしい目線で語り、
二人が成長していくお話です。

小5の娘用に買ってあげて、娘のあとに読みました。

同級生との会話や、双子のミカとの会話がものすごく自然で、
読んでいる自分もすとん!と小学生の目線になっている感じになります。
異性を意識し始めたり、カラダの変化にとまどったりする
微妙な小学6年生の思春期のココロを、とても素直に子どもの目線で
生き生きと描いています。

ミカとユウスケの両親は別居していて、ついに離婚することになり、
高校生のお姉ちゃんは、家出して別居中のお母さんのところへ行ってしまう。
「お父さんは孤独」なんて分かってしまうユウスケはとってもやさしい。

そして、悲しい「すっぱい涙」がカラダにポタリと落ちると、
クネクネとして大きくなる「オトトイ」と名づけた不思議ないきもの。
ミカもユウスケも悲しいことがあると、こっそりオトトイのところに来て
涙を流していくので、オトトイはどんどん大きくなってしまうのだ。

小学生でも、それなりにツライことがいっぱいあって、
泣き場所が欲しいんだよね。



「子どもには幸せになる権利がある」
「正確には、子どもだけじゃなくて みんなその権利を持っている」

だから、大丈夫。
今日はたくさん泣いてしまっても、明日はきっと元気がでるよ。
誰だって幸せになれるんだから。



児童文学ですが、大人でもちょっとほのぼのしながら
面白く読めてしまう本です。
小学校高学年の子どもがいるママさんには超おススメ。
続編の「ミカ×ミカ!」もあります。


第49回小学館児童出版文化賞受賞作
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by marin_star | 2006-11-13 23:22 | 伊藤たかみ  

アルキメデスは手を汚さない(小峰 元・講談社文庫)

懐かしいですね。
昔々、兄の部屋にあった単行本を読んだことがあります。
「プラトンは赤いガウンがお好き」とか「ソクラテス最後の弁明」とかも。
・・・しかし、全然中身覚えてない・・・^^;
たぶん、中学生くらいに読んだので、当時は難しかったんでしょうね~。

東野圭吾さんがミステリを書くきっかけになった・・と
「あの頃ぼくらはアホでした」の中でも書いていたので、
また読んでみたいなぁ~と思っていた矢先に復刊。
さすが、出版社は抜かりないね。
東野さんの直木賞受賞がなかったら復刊はなかったでしょうけど、
今読んでもけっこう面白い。

確かに時代背景とか、登場人物の会話とか観念とか、古いです。
今ドキこんな高校生、理解できないでしょう~。。。と思いますが、
「アルキメデス」というダイイングメッセージあり、毒盛り事件あり、
時刻表トリックあり、密室トリックあり、・・・と本格推理テンコ盛り!
どんどんたたみかけるように事件が展開していくので、
時代の古さを感じつつも、けっこう面白く読めてしまいます。

(高校時代の東野さんが喰い入るように読み耽っている姿を想像すると
さらに楽しい^^)


まあ偶然の重なりで解決するみたいなところはありますが、
当時の高校生が自分たちの生き方を必死に模索しているさまや
彼らなりのポリシーを持って事件に絡んでいく一途さは
なかなか読み応えがあります。

終盤間際のどんでん返しもあり、ラストシーンもかなり印象的。
あー、こういうのも東野さんが影響を受けた部分なのかな、なんて
想像してしまいました^^




第19回江戸川乱歩賞受賞作
198?年初読  2006年9月再読
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by marin_star | 2006-11-02 12:56 | その他