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デッドエンドの思い出(よしもとばなな・文春文庫)

久しぶりに読んだなぁ~、よしもとばなな。
デビュー当時の「キッチン」から始まって「うたかた/サンクチュアリ」
「哀しい予感」「TUGUMI」「白河夜船」「アムリタ」・・・
このへんまでは大好きで(まだ吉本ばななだったね…)
よく女友だちへのプレゼントに「キッチン」を選んだりしてたくらい
好きだったんだけど、いつの間にか読まなくなってた・・・。

「これまで書いてきた自分の作品の中で、いちばん好きです。
これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。」と
帯に書いてあるのを見て、久々に読んでみようかなぁ~、と手にとりました。

普段使いの言葉ばかりなのにとても彼女らしい独特の言い回し、
切なくてきらきらしてちょっとあったかくなる短編5編です。

なんというか、きっと彼女の感性というか、ものの捉え方というのは、
ものすごく常人離れしているというか、ずーーっと突き抜けたところに
あるような気がするんですよね。

人との距離感とか幸せの感じ方とか、いろんなことが、
俗世を奥底まで見つめていった先のすごくキレイな上澄み液の中のような
透明な世界のお話っぽい。
登場人物の悩みや環境はとてもリアルなのに、
出てくる男女の距離感や関わり方がとてもピュアで潔く、
生々しさがないんです。
そして幸せの尺度も、ものすごくベーシックで純粋で研ぎ澄まされています。
そうだよね、こういうふうに幸せを感じて満たされていくことが
かけがえのない人生を大事に生きるということなんだ、と思ったりします。

つらくて切ないことがあっても(あったからこそ)、
心の中に眠っているかけがえのない宝物が
いつかきっときらきらした光を感じて輝きだすときがくる ―――。
そんな幸せで満たされていく瞬間瞬間を、とても温かく切なく描いています。

心がちょっと疲れたときや、つらくて癒されたいときに読みたい、
そんな短編集です。





余談ですが、彼女は大学の同級生。
ゼミが違ったので会話したこともありませんが・・・^^;
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by marin_star | 2006-08-27 22:50 | その他  

僕たちの戦争(荻原浩・双葉文庫)

あー、こういう語り方もあるんだ~、さすが荻原さん。

現代に生きるフリーターでサーファーの健太と
敗戦直前の1944年に生きる軍国青年・吾一が時空を超えて
入れ替わってしまった!

現代っ子で何をやっても長続きせず、
嫌なことがあると波乗りに逃げてしまう健太と、
お国のために戦うため戦闘機乗りを目指して航空隊に所属していた吾一。
この二人が、ある日突然入れ替わり、それぞれおかれた境遇の中で
健太が吾一を、吾一が健太を演じながら、成長していくお話です。

「いくら勉強を怠けていたからといって日本が戦争に負けることは知っている。」
負けると分かっている戦争に命をかけなければならない状況に
追い込まれた健太。
タイムスリップ直後こそ「ドッキリに決まってる」と決めつけて笑ってすまそうと
必死になったり、物静かで控えめな文子の態度にいちいち色めきたったりと
イマドキの若者っぷり全開で笑わせてくれますが、
海軍航空隊の厳しいしごきにあったり、特攻隊に任命されたり、と
どんどん冗談ではすまされない厳しい状況に・・・。

一方、負けるはずがないと信じていた日本の敗戦を歴史の本で知り、
敗戦を迎える前に元の時代に戻って、敗戦を回避しなければ・・と
使命に燃えるが、健太の恋人・ミナミにどんどん惹かれていってしまう吾一。
さらに、物があふれかえり、贅沢をし、喧騒に満ちた生活、
節度のない若者たち、未成熟な大人たち。。。
そんな現代の日本を目の当たりにした吾一は、
自分が命をかけて守ろうとした国の将来はこんなものだったのか?と
愕然とし、空しさを感じてしまう。

敗戦・復興・近代化・バブル・・・と繋がってきた時代を知っている私たちには
目をつぶりたい気持ちもありつつ、なるべくしてなった現代の姿、と
ついつい思ってしまうけれど、
タイムスリップしてきた吾一の純粋な目には
あまりにも哀しい日本の姿だったに違いありません。

二人の目を通して、戦争の浅はかさや愚かさ、
守るべきものとは何なのか、という重いテーマが、
笑いあり&涙アリのユーモアあふれる荻原節で
ごく普通の日常生活のように語られ、すーっと心に入ってきます。

戦争モノってけっこう苦手なジャンルなんですが、
これは全然違和感なく、ラストまでグイグイ読んでしまいました。

ラストは、もうちょと続きを読みたかったな~、と思わせる終わり方で、
いろいろと想像するのも、また楽し。というところでしょうか。
(でも、やっぱり健太と吾一のその後がとっても気になる!)
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by marin_star | 2006-08-26 00:08 | 荻原 浩  

グッドラックららばい(平 安寿子・講談社文庫)

う~~ん。。。なんだかなぁ~・・・

(いつものことですが、
未読の方、これから読む可能性のある方はお読みにならないでください!)



“他人の迷惑顧みず、「自分の気持ち」に素直に生きるタフな4人がここにいる。
けちなモラルや常識なんて笑い飛ばす、新しい家族の物語。”
・・・という裏表紙のコピー。
「本の雑誌 おすすめ文庫王国 2005年度第1位」。
そして平積みの横に付けられた手書きのPOP(内容は忘れたけど絶賛してた・・・)。

これに騙されました。
全然知らない作家さんだけど、ちょっと面白いかも?って。。。

全く共感できず。

なんか、
自由奔放に生きていても家族は自然に繋がってるのよ、
みたいなおとぎ話なの?
まるで現実感なし。
周りを振り回しても「あたしはあたし」でマイペースに生きることが
そんなに素敵?

うーーーーむ、全く理解できません。


プチ家出から何年も戻らない母を夫や娘がどのように捉え、
目の前の生活をやりおおせていくかはけっこう興味深かったのですが、
後半、肝心の母親の目線から語られる真実は勝手このうえなくて、
ホントの家族ならハラワタ煮えくり返りですよ、普通は、ね。
なのに、
最後はなんだか丸く収まってしまう、あー、摩訶不思議。

これが新しい家族、新しい人生・・・といわれてもねぇ。。。
(私は古いまんまで結構です、って思うよ。)


しかも、作者が
「これが代表作になる予感がします」なんて言ってしまって
著者紹介や帯に印刷されちゃってるなんて、
ちょっと浅はかすぎやしませんか?
これが代表作なら、もう他の作品は読みませんよ、絶対。



うーーん。。。超辛口になってしまった。
今にして思えば、解説書いてる人も好きじゃなかったしね。。。
(トホホ。いいとこなし、です。)


ということで、「その他」行き。ゴメンナサイ。
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by marin_star | 2006-08-07 22:54 | その他  

メドゥサ、鏡をごらん(井上夢人・講談社文庫)

この作品、ずっと前から読みたかったんですが、
なかなか書店で見つけられなくて・・・
先日やっと手に入れました!

怖かった・・・!

作家・藤井陽造が、コンクリートを満たした木枠の中に
自ら全身を塗り固めて自殺する場面から、物語は語られ始めます。
傍らに遺された「メドゥサを見た」のメモ。

発見者となった陽造の娘とその婚約者は、
この異様な死の謎、そして最後に書かれていたはずの遺作を探し始めるが。。。

最初は、遺品の中にあった陽造の日記代わりのノートを手掛かりに
なぜこんな異様な死に方をしたのか?「メドゥサを見た」とは?という謎と
遺作の行方を追いかける、ミステリの気分で読んでいたんですが、
次第にどんどん怖くなっていってホラーっぽい感じに・・・

陽造ノートに書かれた人物にあたるうちに
婚約者の周囲に起こる不可解な出来事。
明かされていく過去の事件、連鎖する怪死。
そして、衝撃の忌まわしい過去の事件・・・!

あー、怖い~。どうしよう。もうやめられないよー。
途中で止めたら、怖いままだし・・・
と、必死で(笑)読み進めました。

途中、展開が読めた気がしていたんですが、
見事にその予想をはるかに上回る衝撃の展開に。

う~~ん、さすがです。


何を書いても致命的なネタばれになりそうなので
あまり書けませんが、
井上夢人らしい現実と非現実の境目が分からなくなる恐怖というか、
背筋がゾクゾクするような作品でした。

作中、陽造の書いた作品のことを娘の婚約者が振り返る際、
「SFともホラーともミステリともつかない小説」
「読んでいる間中、ゾクゾクするような不安な気持ちにさせた。
とてつもなく怖い小説」
「怖いのに読むのをやめられず、途中で本を伏せることができなかった。」
と言ってますが、
それって、まさに井上夢人だよ!この作品だよ!・・って思いましたね^^


解説によると、この作品は評価が分かれているそうですね。
(解説の池波志乃さんは、井上作品のベスト1!」とおっしゃってますが。)
確かに、ミステリとして読んだ方には納得いかない部分が
ずいぶんとあるのかもしれません。
でも、
ミステリのつもりで読み始めた私ですが、
もうそんなことはどうでもよくなるほど、
夢中になって読んでしまった、面白い作品でした!
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by marin_star | 2006-08-04 08:32 | 井上夢人