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修羅の終わり(貫井徳郎・講談社文庫)

いや~、重かった・・・
貫井さんの重厚で読み応えのある叙述トリックの大長編です。
さまざまな事件・人物が登場し、とても複雑な構成ですが、
大きく分けて、次の3つの物語を軸に進んでいきます。

ある日突然、記憶を失った青年。
彼の前に「あなたは前世で私の恋人だったのよ」という女性が現れ、
偶然出会った昔の知り合いからは姉の死を知らされる。
なぜ姉は死んだのか?自分は誰なのか?

心の奥底にぞわぞわとうずく「蟲(むし)=邪悪な存在」を自覚しつつ、
売春組織を追う警官・鷲尾は、逮捕拘留した女性への強姦の濡れ衣で
警察を追われてしまう。
自分を陥れた人物への復讐、そして胸に巣食う「蟲」への衝動は
一気に増幅を始め・・・。

スパイ養成を任務とする“桜”としての密かな訓練を受け、
一般人をスパイとして操る「裏の公安」刑事・久我。
任務のためなら一般人の人格否定も厭わない冷酷無比な上司・藤倉の
やり方に戸惑いを感じながらも、藤倉に操られるように修羅の道へ
入っていく・・・。

この3つのストーリーが、
それぞれ同時進行なのかもはっきりと明かされないまま、
錯綜するようにかわるがわる展開していきます。
「どこで繋がるんだろう?」
「ここで出てくる人物は、他の物語のあの人物なのか?」
・・・とめまぐるしく頭をフル回転させながら読まさせられてしまいます。
ラスト1行まで真相が分からない!

読後に残された思いは、鉛のように重いです。
暴力・陵辱・憎悪・復讐・殺意・粛清・存在否定・・・
さまざまな邪悪なものが渦巻く「修羅」の道。
「修羅の終わり」に救いはあるのか?


読み終わると一気に疲れが出るほどヘビーな内容でしたが、
とても考えさせられました。
ずっしりと重いテーマ、張り巡らされた叙述トリック、
まさに貫井さんの本領発揮ですね。
「慟哭」と似たものを感じました。
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by marin_star | 2006-06-23 12:32 | 貫井徳郎  

オロロ畑でつかまえて(荻原浩・集英社文庫)

荻原さんのデビュー作、ようやく読みました!
なぜか近所の書店に全然置いてなくて、
通勤途中わざわざ恵比寿で改札を出て本屋へ立ち寄り、GETしました~

面白かった~^^。

奥羽山脈の一角、小さな駅からさらにバスで2時間もかかる小さな牛穴村。
人口わずか300人、これといった特産もない典型的な過疎の村が、
村の存続をかけた「村おこし」を一念発起!
倒産寸前の弱小広告代理店・ユニバーサル広告社と幸か不幸か巡り会い、
やぶれかぶれの「村おこし」大作戦が始まります。

なにしろ、依頼主の山村の青年会も、引き受けた代理店も
切羽つまった後が無い状況!!まさに「最強タッグ」ならぬ「最弱タッグ」。
どう考えても普通ありえないでしょう~、っていうほどインチキな計画を
一致団結して一生懸命遂行するのです。

この一生懸命なドタバタぶりが、笑わせてくれると同時にホロリとさせられて
ついつい応援してしまいます。(笑)

登場人物もなかなか個性的です。
中でもユニバーサルのデザイナー・村崎の強烈なキャラが大好きですね~^^
クライアントの意向も社長命令も無視して、徹底して自分の作品のリアルを
追求する姿は、あっぱれ!

ラストも希望が見えて、とてもよかったですね。
頑張ればいいことあるよ!と思えるような、
ほっと心温まるユーモアあふれる作品でした!

続編ともいえる「なかよし小鳩組」も面白かったな~。
荻原さんのこういう作品をもっと読みたいですね。


第十回小説すばる新人賞受賞作品
2006年5月読了
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by marin_star | 2006-06-09 12:28 | 荻原 浩  

なかよし小鳩組(荻原浩・集英社文庫)

「オロロ~~」で活躍(?)したユニバーサル広告社が
またまた笑わせてくれます。

相変わらず自転車操業・倒産寸前のユニバーサルに
「企業のCI」という大仕事が舞い込みます。
CI!!企業のイメージ戦略のために社名ロゴやスローガン、
さまざまな広告を任される、という「幸運」に、
お調子者の社長・石井は大はしゃぎ。
しかし、クライアントは「小鳩組」という指定暴力団だった!!

逃げるに逃げられない状況、まさに命を懸けて
必死に「大仕事」に奔走するユニバーサルの面々とヤクザとのやり取りが、
大マジメなだけに笑いの連続です。
「任侠展」には大笑いしちゃいましたー。

最初はビクビクしながら何とかやり過ごそうとしている彼らですが、
だんだんと広告代理店の意地を見せ始めます。
私の大好きなキャラ・デザイナー村崎のマイペースぶりも健在です^^。

アル中スレスレでバツイチのコピーライター杉山と、
別居中の小学生の娘・早苗との物語が、また胸にじーんときます。
(この早苗のキャラがまたサイコーです!)
「ダメな父ちゃん」だった杉山が、離れ離れになった娘に
頑張ってるところを見せようと、ひたすらに走るラストは、
思わず熱いものがこみあげます。

たっぷり笑えて泣ける、荻原さんならではの素敵な作品でした!
ぜひ「オロロ畑でつかまえて」とセットで読んで欲しいなと思います。


2006年4月読了
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by marin_star | 2006-06-09 12:23 | 荻原 浩