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陽気なギャングが地球を回す(伊坂幸太郎・祥伝社ノンノベル)

個性的な登場人物と知的で洒落た会話が小気味よく心地よい、
無条件に楽しめる作品です。

嘘を完璧に見抜いてしまう男、饒舌な演説名人、
動物好きな天才スリ、1秒の狂いもない体内時計を持つ女。
この4人の銀行強盗(ギャング)たちの、まあ何と愛おしいこと!

とにかく、彼らの交わす台詞の一つ一つがキラキラと光っていて、
軽快でテンポの良いやり取りに心を奪われてしまいます。
こんな洒落た会話を物語の中に違和感なくすぅーっと溶け込ませて
実に見事に登場人物の個性を魅力的に立たせているスゴさ!
これはもう、伊坂ワールド炸裂です!
用意された小道具たちの笑える使われ方も面白かったし、
エピソードの一つ一つも、なかなか他の作家さんでは出会えない
伊坂さんならでは、という感じが。

展開としては分かりやすい、実にスッキリ明快なお話です。
最後のどんでん返しの連続も、先が読めてしまう感じはありましたが
そうなってくれた安堵感というか、まっとうな展開を喜んで受け入れられました。

普通の人がほとんど出てこない(笑)ので、映画的な感じを受けましたね。
(映画化も楽しめそうです。)
キャラがはっきりしてるっていうか、悪人とそうでない人たちの役割も明確。
なので、
難しいこと考えずに、思いっきり伊坂ワールドを楽しみましょう!
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by marin_star | 2005-08-03 00:06 | 伊坂幸太郎  

晩鐘<上・下>(乃南アサ・双葉文庫)

『風紋』の続編。

『風紋』で殺人事件被害者の遺族となった家庭と、
「殺人者の家族」という運命を背負ってしまった家族。
この2つの家族が、事件から7年後どうなっているのか・・・

やはり彼ら・彼女らの生活は、過去の事件から救われてはいない。
「風紋」を読んだのは1年以上前ですが、「晩鐘」を読み進めていくうちに
あの頃に感じた胸の痛み・事件の全貌が改めて自分の中にも蘇ってきて
「あー、やっぱりこんなにも立ち直れないものなのか」と
胸の奥をぎゅっと掴まれたような苦しさを感じました。

上下巻ともに700ページ近い超長編ですが、
登場人物たちの、変わろうとしても変われないもどかしさや諦め、
普段の一日一日の生活をこなすだけでやっとの危うさ、
・・・そういった本当に根の深い心の闇に、ほんの一筋の光を射すことが
こんなにも年月がかかり、難しいことなんだ、ということを伝えるためには
この長さが必要だったのでは、と思います。

事件に巻き込まれた被害者家族の深く絶望的な苦しみ、
そして被害者の立場なのに自分や家族を責めてしまい、
自ら立ち直りを遅らせてしまう現実。

その一方で、ある日突然「殺人者の家族」という事実を突きつけられ、
何もかも失い、崩壊していく人たち。
事件を起こした本人の悪の連鎖が次々と家族を深い闇に陥れ、
壊れていく家族を目の当たりにした本人もまた涙を流す。

たった一瞬の殺意がこんなにもたくさんの人たちの運命を
一変させてしまうことを、
殺意を一度でも抱いたことのある人に知ってもらいたい。

「風紋」も長いですが、そちらを読んでからでないと
この作品の登場人物の苦しみは理解できません。
ぜひ、2作とも読むことをおすすめします。
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by marin_star | 2005-08-02 23:55 | 乃南アサ  

怪笑小説(東野圭吾・集英社文庫)

またまた笑いました!
『毒笑小説』に先がけて発表されたブラックな笑いのテンコ盛りです。

こっちのほうがいっそう容赦ないですねぇ~(笑)
登場人物の突き進み具合も半端じゃないし、9編の短編は
どの作品もタガが外れたような勢いを感じます。

詳しく書いてしまうと、ホントにネタバレで笑えなくなってしまうので
とても書きにくいんですが・・・

混雑した電車の中で誰もがイライラして考えそうな心の中の罵倒を書き連ね、
最後のシーンを想像するだけでもむちゃくちゃ楽しい『鬱積電車』。
理系の東野さんが書いたからこそ面白い、「UFOはたぬきだ」という持論で
「UFO実在論」を展開する研究者をやり込めてしまう『超たぬき理論』。
その他、
『無人島大相撲中継』・『しかばね台分譲住宅』・『動物家族』も面白い。
人間の壊れ方というか、常軌を逸脱したブラックな本音が
これでもか~~っ!とたたみかけてきます。

常識人を自認する方は、読むのをお止めください。(笑)

ミステリ作家の顔とは違った東野さんの魅力を楽しめるシリーズなので、
もう一つの『黒笑小説』も早く読みたいです!
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by marin_star | 2005-08-02 23:32 | 東野圭吾  

風精<ゼフィルス>の棲む場所(柴田よしき・光文社文庫)

ちょっと幻想的なライトミステリです。
謎解きや推理はそれほど重要ではありません(と、私は勝手に解釈)。

地図に載っていない、現世離れしたノスタルジックな山奥の村。
守り神でもあるゼフィルスと呼ばれる幻の蝶と
村に伝わる『消えた乙女の伝説』をモチーフに、
哀しくせつない事件が起こります。

物語を通して、とても幻想的で清らかな、透明感のようなものを感じます。
静かに、そして密かに生息する幻の蝶を、
物陰からそっと見つめているような。

ちょっと心の隅に大事にしまっておきたいような、そんな作品でした。
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by marin_star | 2005-08-02 21:17 | 柴田よしき