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オルファクトグラム(井上夢人・講談社文庫)

2005年2月に文庫化された作品で店頭にあるのはずっと知ってました。
井上作品ということで面白いに違いない、と思ってみるものの、
「イヌ並みの嗅覚を持つ主人公が事件を追う・・」という設定にどうも手が伸びず・・・
なんか嗅覚の表現って魅力感じなかったんですよ。
イヌみたいにクンクン地面を嗅ぎ回って事件解決?
地味だし、リアリティなさそーっ・・・って。

ゴメンなさい、本当にゴメンなさい。
早く読まなかった私は大馬鹿モノです!!

研ぎ澄まされた嗅覚、匂いをこんなふうに描写するなんて
井上夢人はスゴイ!スゴすぎる!!
見えないからこそ表現する言語も発達していない匂いの世界を
こんなにもありありと美しく私たちに見せてくれるなんて!
その創造力の素晴らしさ、確かな描写力に改めて感激してしまいました。
しかも、その「匂いを視覚化する」というアイディアに溺れることなく、
いつの間にか、素晴らしいラブストーリーのためのファクターの一つにまで
昇華させているところがスゴイです。

これは傑作だと思います!(読後で高揚しすぎ?^^;)

異能力を身に付けた主人公というとココ一番というときに
都合の良い活躍をしてしまいがちですが、そんないかがわしさは全然なく、
地に足のついた等身大の主人公がとても好ましく応援したくなります。

人生の価値観が思いっきり変わってしまった主人公の
「一人ぽっち」になってしまう孤独感が切なく胸に迫ります。
感動的かつ温かな気持ちになれるラストシーン・・・。

井上作品はみなラストが素晴らしいけど、この作品は秀逸です。
愛にあふれています。
このラストに向かって、このラストのために登場人物たちの苦悩が
あったんだな、と。

2001年度「このミス」第4位作品。
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by marin_star | 2005-07-11 23:55 | 井上夢人  

廃用身(久坂部羊・幻冬舎文庫)

これは小説です。
分かっていながら、ドキュメンタリと言われれば信じてしまうような構成に
見事にハマってしまいました。

現場の医師が出版する本のために書かれた原稿+本の出版に携わった
編集者の注釈、という2部構成になっていて、
老人介護の現状や廃用身の切断についての生々しさを伝える、という
難しいテーマに成功しています。
現場の声だからこその患者本人の切実な願望、喜怒哀楽というものが
すっと心に入ってくる。

「廃用身」とは脳梗塞などの麻痺で回復の見込みが全く無い手足のこと。
回復の見込みが無い手足を切断してしまえば・・・

なんて恐ろしい発想なんだろう、と思った。誰もがそう思うはず。
しかし、本書を読むと動かないはずの手足が本人の意思と関係なく突如暴れたり、日常生活の大きな“邪魔モノ”になっている事実を知らされる。
しかも、邪魔どころか憎むべき存在であり、病気を悪化させる要因にもなりうるのだ。

そして必要のない手足があるばかりに、介護の負担は重くなり、
疲れた介護者たちは介護放棄・虐待への暗路に入り込んでいく・・・。

手足を切断した老人たちが、無くなった手足を惜しむこともなく、
むしろ生き生きと人生を楽しむように変わっていく。
そんなことがあるだろうか?
読み進むうちに「そうなのかもしれない」とも思わせられるし、
人間なら誰しも「もしかしたらまだ動くかもしれない」というかすかな希望を
捨てられないのでは?とも思う。

画期的な医療法なのか?それとも悪魔の療法なのか?

後半は予想もしない衝撃の展開となり、最後まで読み応えがありました。
老人介護なんてまだまだ先・・という若い世代にもショッキングな内容だと思います。
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by marin_star | 2005-07-04 23:15 | 久坂部 羊  

グレイヴディッガー(高野和明・講談社文庫)

高野さん、いい作家さんですね~。
13階段」も素晴らしかったけど、この作品もまた違った魅力満載です!

少年時代から悪さをしてきた主人公・八神は、今までの行き方を改めようと
骨髄ドナー登録をし、まさに明後日の骨髄提供の手術を控え、
他人の命を救おうとしていた。
そんな時に、連続猟奇殺人事件が発生、何故か身に覚えのない集団に
狙われ追われる八神。

不気味な猟奇殺人犯「グレイヴディッガー」と得体の知れない集団、
そして連続殺人の重要参考人として警察にも手配される中、
八神は骨髄移植のための病院をひたすら目指し、
緊迫した逃走劇が繰り広げられます。
逃げても逃げてもいつの間にか現れる追っ手、
そしてその背後には「グレイヴディッガー」の魔の手が。。。
スリルとスピード感のある展開に、八神のちょっとユーモアの効いたキャラが
上手く噛みあって、飽きずに読ませてくれます。
悪人なんだけど根はいいヤツ、っていうキャラクターが大好きなんですよ、私。
しかも熱血だし。
ラストの終わり方も好き。

刑事部と公安部の対立を絡ませた登場人物も、みな魅力的でした。
それぞれの立場でまた別のストーリーができるんじゃないか、と思うほど。
続編は難しいかもしれないけど、この作品の登場人物たちが
また活躍する話を読みたいなぁ~。
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by marin_star | 2005-07-04 22:10 | 高野和明  

ゲームの名は誘拐(東野圭吾・光文社文庫)

面白かったです。
でも、東野さん作品にしてはちょっと物足りなかったかな・・?

広告プランナーの佐久間は、任されていた大きなプロジェクトを
クライアントの重役の一言で潰され、担当をはずされてしまう。
たまたまその重役の屋敷から家出してきた娘と出会い、狂言誘拐を企み、
重役に勝負を挑むが・・・。

携帯電話やインターネットを駆使し、身代金3億円を奪う手口は、
素人が思いつきでやったにしてはよく考えた、というレベルで、
警察が介入してたらあっという間に逮捕では?と思ってしまう場面も。
結局相手のほうが数段上手だったわけで・・・。
これって、やぱり佐久間のキャラクターが薄っぺらい(軽薄な)印象だからか?
映画化された「g@me」の藤木直人のイメージのせいでしょうか・・・
(映画は観てないんで、あくまでイメージなんですけどね。)

もっと“がっぷり四つ”のような真剣勝負を期待してたので、
佐久間のキャラにもっと切羽詰った重厚感があればまた違ったかな、と。
だって、企画はずされたくらいで・・・ねぇ?^^;

まあ、軽く読むには面白い作品です。
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by marin_star | 2005-07-04 12:36 | 東野圭吾