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FRY(新野剛志・文春文庫)

新野さん初作品です。

江戸川乱歩賞受賞作家さんなんですね。実は全然知らなくて・・・
店頭でふと手に取り、恋人を目の前で殺された男が15年かけて犯人を追う・・という
骨太の設定と、パラパラと拾い読みしてみたらグッと惹き込まれそうな感覚が
あったので、買ってみました。

正解!!

すごく面白かったです。
私、けっこう、こういう暗めの執念が滲み出るような話が好きなのかも・・^^;


17歳の高校生だった向井は、ボクシングの自主トレで走りに行く高台の公園で
九州一周の旅行中で公園にテントを張って寝泊りしているという中年の男に出会う。
優しい目をして話しかけるその男は指名手配中の殺人犯・戸浦だった。
それに気づいた向井は警察に通報するが戸浦は逃走、
それを逆恨みされ、向井は目の前で恋人の佳奈を刺し殺されてしまう。。。

一方、戸浦の愛娘・祥子は、殺人犯の娘として自分の夢も恋もあきらめ、
他人とも距離をおいてひっそりと暮らしている。
同じバイト先の俊介は祥子に想いを寄せるが、祥子に付きまとう向井の存在を知り、
向井・戸浦の執念の関係の中に引きずり込まれるように関わっていくことになる。

これに、向井と同郷の人気アーティスト・美咲、美咲の母の愛人・松永、
高校時代に佳奈に想いを寄せていた相田が登場し、
物語は15年の歳月をかけてじわじわと絡みあい、グイグイと読ませていきます。

向井の執念。
あまりに残酷な形で突然終わってしまった17歳の少年の純朴な恋は、
ここまで人を追い詰め、変えてしまうのか。。。
無表情で何かに突き動かされるように祥子につきまとい、
戸浦を探し続ける向井。


ラストに向かって徐々に明らかになっていく真相はまさに衝撃でした。
生きるために歌手になるしかなかった美咲の人生も、あまりにも哀しい。
殺人犯の娘というだけでも重いものを背負っているのに
叶うことのない恋をあんな形でしか示せなかった祥子も。
そして、佳奈の本当の苦しみも。


でも、こんなにも残酷で悲壮な物語でも読後感に安らかな気持ちが残ります。
心が掻き乱されるほどに苦しくて哀しい、でもまた再読したいと思わせる
読み応えのある本でした。
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by marin_star | 2007-10-22 12:33 | 新野剛志