カテゴリ:本多孝好( 1 )

 

MOMENT(本多孝好・集英社文庫)

本多さん、初読了です。

読んでいる途中から、
素敵な作家さんに出会えたワクワク感で幸せな気分に・・・。
伊坂さんを初めて読んだときと似てる!

集英社文庫のナツイチキャッチは「好きな本を一冊つくろう。」だけと、
好きな作家さん一人見っけ!・・って感じです♪


死ぬ直前の患者の前だけに現れて願いをたった一つだけ叶えてくれる
“仕事人”がいる、という噂のある病院で掃除夫のバイトをする「僕」。

「自分が死ぬときに何を考える?」
「死ぬ前に一つだけ願いが叶うとしたら・・・?」
人はいったい何を考え、何を願うのだろう。

過去の罪への懺悔、恨みを持つ人への復讐、
会いたいのに会えなくなった人への恋慕、
誰かの心の中に自分の存在を刻み込むこと、
死への恐怖を誰かに分かち合ってもらうこと、
残される者たちへに対する誇りを守ること・・・?


ある末期患者の願いを叶えたことから
「僕」の元に舞い込むようになった最後の願いを一つ一つ
精一杯聞き遂げようとする物語が、一篇ずつ描かれていきます。

戦地で仲間を殺した過去を持つ老人、
治癒の見込みの薄い心臓疾患を抱えた14歳の少女、
病院の公衆電話からどこかへ留守電メッセージを入れ続ける女性・・・

死に向かって時間を削られていく彼らの想い、苦しみ、哀しみは
圧倒的な存在感があります。

バイトを斡旋してくれた幼馴染の葬儀屋・森野もキャラは強烈。
「女性」とはっきり書かれているのに、読み進めていくと
いつの間にか私の中では男の親友のイメージに・・・^^;


それに比べて「僕」には神田という名前がありますが、
病室に掃除に入っても決して目立つことのない
「鼠色の作業衣を着た掃除夫」という印象が際立つ控えめな存在。
大学卒業前なのに、先のことも、どんな大人になりたいのかも見えず、
ある意味漂っている「僕」。

「僕」を取り巻く人々は確かな「個」を持っているのに、
「鼠色の作業衣」に象徴される掃除夫の「僕」。

そんなどこにでもいそうな、でもまっすぐで誠実な青年と
死に対峙している人たちの圧倒的な存在感とのバランスがとてもいい。


「FACE」「WISH」「FIREFLY」、そして最終章の「MOMENT」へ続く
一篇一篇が、とても大事に読みたいと思わせる素敵な物語です。

3篇めまで、一つのエピソードを丹念に静かな時間の流れで描いていますが、
最終章は、かなり濃密な展開で時間の流れる速度も違った感じです。
(ちょっとだけまとめに走りすぎた感も・・?)

“必殺仕事人”の真の意味、「やがて死んでいくこと」と「今を生きること」、
そして「僕」が出した答え・・・。

鼠色の作業衣を着た掃除夫から「神田」としての僕自身に脱皮し、
羽ばたいていく空を見つける・・・そんな印象を持った作品でした。
(だから表紙は青空に羽ばたく蝶なのかな?)

とても良い読後感。
会話のセンスのよさや、物語の根底に流れるまっすぐな姿勢みたいなものが
とても心地よいです。
伊坂さんを好きな人は絶対好きなはず!(独断ですが・・・^^;)

本多さん、次は「FINE DAYS」を購入済み。
とても期待です^^。
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by marin_star | 2006-09-08 11:52 | 本多孝好