カテゴリ:荻原 浩( 6 )

 

メリーゴーランド(荻原浩・新潮文庫)

荻原さんのひさびさの文庫新刊♪
くすくすっと笑えてちょっとしんみり・・・
実はけっこう深いお話でしたね~。

過労死続出のメーカーを辞めてUターンし、公務員となった啓一。
愛する家族と平穏無事な生活を送っていたかと思ったら、
超赤字のテーマパーク再建の推進室へ移動になり、
ヤル気のない同僚やとんでもない天下り理事たちに囲まれながら、
再建のための一大イベントに向けて孤軍奮闘しなければならなくなった・・・。

孤軍奮闘・・・といっても、頼りになるんだかむしろ爆弾を抱えてしまったのか
分からないような、強烈キャラの外部スタッフが次々と加わってきて、
もー、アクが強いのなんの・・・って(笑)
ふたこぶらくだの劇団員たちや、宮大工修行中のシンジとその取り巻きの
「鉄騎隊」の若者たち・・・ものすごい魅力あふれる面々が
パワフルにぶつかり合いながらイベント当日に向けて徐々にそのパワーを
集結させていきます。
こういうのが荻原さんの上手いところで、思い切り笑わせてくれるし、
一気に読ませる面白さはやっぱりさすが^^

「オロロ~~」や「なかよし小鳩組」を思わせるテーマですが、
ガハハっと笑えた「なかよし~~」よりも、もっと苦くてシニカルです。
一大イベントが成功するか否かの盛り上がりまででハッピーエンドかと
思いきや、そこからがまさにこの本の読ませどころだったわけで、
たたみかけるように切なく苦い急展開に。
(ネタバレになっちゃうので、あんまり詳しく書けないんですけど・・・^^;)

お父さんの仕事を作文に書く、という息子の言葉に自己問答する啓一の姿や、
劇団ふたこぶらくだの「豆男」の話、不思議の国のアリスの話が
物語に上手く絡んで、何も起こらない平穏無事な生活に満足していた啓一に
「何か起こさなきゃ何も始まらない」前向きな気持ちを起こさせます。

ラストは荻原さんらしく、堂々と前を向いた主人公が爽やかで、
素敵なラストでした。
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by marin_star | 2006-12-09 23:04 | 荻原 浩  

僕たちの戦争(荻原浩・双葉文庫)

あー、こういう語り方もあるんだ~、さすが荻原さん。

現代に生きるフリーターでサーファーの健太と
敗戦直前の1944年に生きる軍国青年・吾一が時空を超えて
入れ替わってしまった!

現代っ子で何をやっても長続きせず、
嫌なことがあると波乗りに逃げてしまう健太と、
お国のために戦うため戦闘機乗りを目指して航空隊に所属していた吾一。
この二人が、ある日突然入れ替わり、それぞれおかれた境遇の中で
健太が吾一を、吾一が健太を演じながら、成長していくお話です。

「いくら勉強を怠けていたからといって日本が戦争に負けることは知っている。」
負けると分かっている戦争に命をかけなければならない状況に
追い込まれた健太。
タイムスリップ直後こそ「ドッキリに決まってる」と決めつけて笑ってすまそうと
必死になったり、物静かで控えめな文子の態度にいちいち色めきたったりと
イマドキの若者っぷり全開で笑わせてくれますが、
海軍航空隊の厳しいしごきにあったり、特攻隊に任命されたり、と
どんどん冗談ではすまされない厳しい状況に・・・。

一方、負けるはずがないと信じていた日本の敗戦を歴史の本で知り、
敗戦を迎える前に元の時代に戻って、敗戦を回避しなければ・・と
使命に燃えるが、健太の恋人・ミナミにどんどん惹かれていってしまう吾一。
さらに、物があふれかえり、贅沢をし、喧騒に満ちた生活、
節度のない若者たち、未成熟な大人たち。。。
そんな現代の日本を目の当たりにした吾一は、
自分が命をかけて守ろうとした国の将来はこんなものだったのか?と
愕然とし、空しさを感じてしまう。

敗戦・復興・近代化・バブル・・・と繋がってきた時代を知っている私たちには
目をつぶりたい気持ちもありつつ、なるべくしてなった現代の姿、と
ついつい思ってしまうけれど、
タイムスリップしてきた吾一の純粋な目には
あまりにも哀しい日本の姿だったに違いありません。

二人の目を通して、戦争の浅はかさや愚かさ、
守るべきものとは何なのか、という重いテーマが、
笑いあり&涙アリのユーモアあふれる荻原節で
ごく普通の日常生活のように語られ、すーっと心に入ってきます。

戦争モノってけっこう苦手なジャンルなんですが、
これは全然違和感なく、ラストまでグイグイ読んでしまいました。

ラストは、もうちょと続きを読みたかったな~、と思わせる終わり方で、
いろいろと想像するのも、また楽し。というところでしょうか。
(でも、やっぱり健太と吾一のその後がとっても気になる!)
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by marin_star | 2006-08-26 00:08 | 荻原 浩  

オロロ畑でつかまえて(荻原浩・集英社文庫)

荻原さんのデビュー作、ようやく読みました!
なぜか近所の書店に全然置いてなくて、
通勤途中わざわざ恵比寿で改札を出て本屋へ立ち寄り、GETしました~

面白かった~^^。

奥羽山脈の一角、小さな駅からさらにバスで2時間もかかる小さな牛穴村。
人口わずか300人、これといった特産もない典型的な過疎の村が、
村の存続をかけた「村おこし」を一念発起!
倒産寸前の弱小広告代理店・ユニバーサル広告社と幸か不幸か巡り会い、
やぶれかぶれの「村おこし」大作戦が始まります。

なにしろ、依頼主の山村の青年会も、引き受けた代理店も
切羽つまった後が無い状況!!まさに「最強タッグ」ならぬ「最弱タッグ」。
どう考えても普通ありえないでしょう~、っていうほどインチキな計画を
一致団結して一生懸命遂行するのです。

この一生懸命なドタバタぶりが、笑わせてくれると同時にホロリとさせられて
ついつい応援してしまいます。(笑)

登場人物もなかなか個性的です。
中でもユニバーサルのデザイナー・村崎の強烈なキャラが大好きですね~^^
クライアントの意向も社長命令も無視して、徹底して自分の作品のリアルを
追求する姿は、あっぱれ!

ラストも希望が見えて、とてもよかったですね。
頑張ればいいことあるよ!と思えるような、
ほっと心温まるユーモアあふれる作品でした!

続編ともいえる「なかよし小鳩組」も面白かったな~。
荻原さんのこういう作品をもっと読みたいですね。


第十回小説すばる新人賞受賞作品
2006年5月読了
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by marin_star | 2006-06-09 12:28 | 荻原 浩  

なかよし小鳩組(荻原浩・集英社文庫)

「オロロ~~」で活躍(?)したユニバーサル広告社が
またまた笑わせてくれます。

相変わらず自転車操業・倒産寸前のユニバーサルに
「企業のCI」という大仕事が舞い込みます。
CI!!企業のイメージ戦略のために社名ロゴやスローガン、
さまざまな広告を任される、という「幸運」に、
お調子者の社長・石井は大はしゃぎ。
しかし、クライアントは「小鳩組」という指定暴力団だった!!

逃げるに逃げられない状況、まさに命を懸けて
必死に「大仕事」に奔走するユニバーサルの面々とヤクザとのやり取りが、
大マジメなだけに笑いの連続です。
「任侠展」には大笑いしちゃいましたー。

最初はビクビクしながら何とかやり過ごそうとしている彼らですが、
だんだんと広告代理店の意地を見せ始めます。
私の大好きなキャラ・デザイナー村崎のマイペースぶりも健在です^^。

アル中スレスレでバツイチのコピーライター杉山と、
別居中の小学生の娘・早苗との物語が、また胸にじーんときます。
(この早苗のキャラがまたサイコーです!)
「ダメな父ちゃん」だった杉山が、離れ離れになった娘に
頑張ってるところを見せようと、ひたすらに走るラストは、
思わず熱いものがこみあげます。

たっぷり笑えて泣ける、荻原さんならではの素敵な作品でした!
ぜひ「オロロ畑でつかまえて」とセットで読んで欲しいなと思います。


2006年4月読了
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by marin_star | 2006-06-09 12:23 | 荻原 浩  

神様からひと言(荻原浩・光文社文庫)

だいぶ前から本屋で手にとっては、ちょっとためらっていた作品。
「書店員さんが大絶賛!」って帯の文句、
ちょっと引いちゃいますよ・・・しかも、物静かな地味めの装丁。
でも
この間、どうしても欲しい本が他になくて、
「やっぱり荻原さんだし。読んでみようかな」と購入。

面白かった!

導入部は大真面目な仰々しい会議の様子から始まります。
「うーむ・・・・ずいぶん硬い話?」と思ったのですが、
すぐに、その大真面目な会議の本当の中身に大笑い。

ここから一気にユーモアあふれる荻原節が全開です!

広告代理店をクビになって珠川食品に再就職した凉平は、
新製品の企画会議で話の分からないダメ上司たちにイライラして
喧嘩を起こしてしまい、「お客様相談室」へ左遷。
一緒に暮らしていたリンコにも突然出て行かれてしまい、
プライベートも仕事もメタメタ。

相談室にかかってくるクレーム電話は、
ろくでもない製品を販売しているおかげでとんでもないものばかり。
このクレーム対応ぶりがめちゃめちゃ笑えます。
(実際問題、こんな対応してたら会社潰れますけどね~^^;)

しかも、相談室はリストラ寸前の社員が追い込まれてくる吹き溜まりで、
一癖も二癖もある変人揃い。
加えて、ダメ上司やなにやら謎の「明石町」と呼ばれるお婆さんなど、
濃いキャラが目白押し。
この素晴らしく個性的な登場人物だちが、ものすごく効果的に
絡み合って、思わずぷぷぷっと笑ってしまうのですよ。

中でも、相談室の先輩格・篠崎のキャラがすっごいイイ味出してます。
ふだんは競艇にハマってフラフラしているのに、
ことクレーム対応に関してはプロ中のプロ。
ヤクザだってうまく追い返してしまいます!
これが痛快!

笑いに笑って、最後はホロっとしてしまい、
生きる希望がふっとわいてくる。
そんな荻原節がたっぷりと楽しめました!

荻原作品は少し当たり外れを感じるところがありますが、
これは文句なく「大当たり」でした~^^
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by marin_star | 2006-05-15 23:16 | 荻原 浩  

噂(荻原 浩・新潮文庫)

最近、あちこちで目に留まり気になっていた荻原さんの本を
初めて読んだのが、この「噂」。

ミリエルという香水をつけていればレインマンに狙われない。
レインマンに襲われた女の子は足首を切り落とされてしまうんだって。。。

渋谷の街にまことしやかに流れる「噂」は、香水の新ブランドを売り出すための
クチコミ戦略だったが、やがて噂は現実となり足首の無い少女の遺体が
次々と発見される。

ちょっと自分の仕事とオーバーラップする部分もあり、
興味深くぐんぐん引き込まれて読みました。

高校生の娘と二人暮らしの所轄中年刑事・小暮と、
本庁強行班係の若き女性エリート・名島の二人が
少しずつ心を通わせながら事件の真相に迫っていきます。
捉えどころのない渋谷の高校生とのやりとりなんかも面白い。

この二人の刑事コンビがとてもいいですね。
人間くささがあって、ちょっとユーモラスで温かみがあって。
事件の展開もスリリングで十分楽しめました。

でも。。。ラストには納得いきません。
「衝撃のラスト一行に瞠目!」と帯にでかでかと書いてあるんですけど。
確かにじわじわと背筋が寒くなるようなラストでしたけど、
なんかそれまでの小暮・名島コンビの物語を台無しにしてしまったような
ものすごい違和感を感じてしまいました。
なんか、このラストのために書かれた物語、っていう気がしないんですよね。
もしかして、小暮・名島コンビに感情移入しすぎてしまったのでしょうかね、私。

このコンビのほのぼのとした味わいがあるからこそ、
ラストの衝撃も大きいのかもしれませんが、
やられた!と歯噛みしたくなるような納得の大どんでん返し、という感じは
しませんでした。
裏切られたと感じるのは私だけでしょうか。。。
こんなラストであってほしくない、という想いが強いのかもしれません。
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by marin_star | 2006-04-12 22:47 | 荻原 浩