カテゴリ:小川洋子( 2 )

 

偶然の祝福(小川洋子・角川文庫)

ちょっと最近女流作家さんが気分・・・ということで、
博士の愛した数式」でものすごく感動した
小川さんの短編集を読んでみました。



(ゴメンナサイ、これから読もうと思っている方は
以下、お読みにならないことをおススメします。)


このところ、東野さんの短編集で短編の面白さを発見し、
あたしもけっこう短編OKかも♪・・・なんて思っていたのが
マチガイでした。。。
(もともと、短編が苦手な私です<汗;;)

こういう「雰囲気」で読ませる、みたいな短編集は読んでいて苦痛です・・・

なんか、空間のある一部分を切り取ったような、
不思議感のある短い物語が連なる、一応は連作集なんですが、
これで何か言いたいことがあったのか???と首を傾げてしまうほど
何が書きたかったのか、私には理解できませんでした。

次から次へ繰り出される理解不能な物語たち・・・
次こそは・・と思いなおすたびに裏切られた感が
どんどん蓄積してしまうんですよね。
ものすご~く薄い本だったのに、一話終わるごとに
あー、まだあるよ・・・と鬱々としながら、やっとの思いで読了する始末。

私にはこういうタイプの作品を読みこなす力量がないのでしょう。
あー、ホントにゴメンナサイ。
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by marin_star | 2006-10-24 12:30 | 小川洋子  

博士の愛した数式(新潮文庫・小川洋子)

たった今読み終わって、ものすごい感動に包まれています。
最後の1ページは、涙があふれて胸が詰まりました。
今も、涙腺がじわっときます。。。

「ぼくの記憶は80分しかもたない」
くたびれた背広に無数のメモを貼り付けた「博士」は、
事故の障害により、きっかり80分前の記憶が完全に消失してしまう。
そんな博士のもとに家政婦として雇われた「私」とその息子「ルート」の
温かい慈愛に満ちた、ちょっと風変わりな生活と心の交流が
淡々と綴られていきます。

記憶を失ってしまう博士にとって、毎朝訪れる家政婦は
いつも「初対面」。
そんな些細な事実にも衝撃を受けます。
そして、メモを確認することで
「ぼくの記憶は80分しかもたない」という事実を
受け入れなければ始まらない毎日。。。

なんという孤独でしょう。

そんな博士の唯一のコミュニケーション方法が
数字や数式を語ることなのです。

ただの素っ気無い数字や数式に、こんなに深い意味と美しさを
見いだすことができるなんて、数学が苦手な私には驚きでした。
純愛の文学と数学が見事に融合していて、
数式の解説部分も退屈や押し付けと感じることが全くなく、
博士の心の言葉としてすーっと心に沁み込んできます。
奥深い数学の世界の入り口を、ちょっとだけ私も覗けたかな、と
幸せな気分にさせてくれたことにも、感動を覚えました。

記憶を維持できない老博士と、まっすぐに向き合う親子の姿は、
本当の「慈しむ心」とは何か、お互いに支え合い、
守り合うことの大切さを静かに語ってくれます。
生活の一つ一つのシーンがかけがえのないものであり、
そのかけがえのない記憶を維持できないことが
いかに辛いことか、ということも。
そして、同情ではなく対等の人間として相手の尊厳を尊重する大切さを
10才の少年に教えられたりもします。

ラストへの展開は、淡々と綴られていきますが、
哀しく切ない中にも深く温かい愛情に満ちた、
春の陽射しのような穏やかな祈りのようなものを感じ、
涙してしまいました。

普段、長編を好む私にしては、とても薄い本でしたが、
濃密でたっぷりとした余韻のある、本当に素晴らしい作品でした。

第1回本屋大賞受賞作品。
2006年1月 映画化(寺尾 聡・深津絵里)
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by marin_star | 2006-02-15 12:18 | 小川洋子