カテゴリ:伊坂幸太郎( 7 )

 

チルドレン(伊坂幸太郎・講談社文庫)

2006年に単行本を読了したのですが、確か「アヒルと鴨の~」の初読の後で
何か物足りなさを感じてしまい・・・
(「アヒルと鴨の~」は本当に衝撃的な感動作だったので。)
伊坂作品の中でも特に人気の作品なのにタイミングが悪かっただけ!と思いなおし、
文庫化されてからすぐ、そしてついこの間3回めを再読。
ようやくこの作品を楽しんで読むことができたので、レビュー書きます^^;


陣内のキャラがやはり秀逸ですね。
ふだんはメチャクチャなことを言ったり、いい加減で自己中心的で
周りを振り回すちょっと厄介なキャラなんだけど、
時折見せる“満塁逆転ホームラン”的な言葉や態度が
ものすごくまっとうで、自然体が心地よくて、爽快なんですよね。

生まれつき目の見えない永瀬が見知らぬおばさんから
「がんばってね」と5,000札を握らされた時、
「なんでおまえだけ。ずるいだろ!」と本気で怒る陣内とか。
笑っちゃうほどの子どもっぽい態度の芯には、
生まれつきの障害=ハンデ・同情とは捉えない、本当の意味でボーダーを引かない、
これ以上ない人間としてまっとうな精神が宿っていて、
私たちは「差別・平等」ということに対して難しく頭の中だけで考えすぎ、
どこか勘違いしていることを思い知らされます。

こういうことをサラリと書いてしまう伊坂節はやっぱりスゴイ。

そして、何気ない会話やエピソードの一つ一つが相変わらず、素晴らしい。
どのページをめくっても、お気に入りの台詞や場面がいっぱいなんだけど、
中でも、家裁調査官の少年係となった陣内が、酔っ払って少年法を批判する
サラリーマンに絡まれたときに発したこの言葉が最高!

「俺たちは奇跡を起こすんだ。」
「ところであんたたちの仕事では奇跡は起こせるのか?」


伊坂さんは人間としての尊厳というのをすごく大事にしている作家さんだと思います。
「重力ピエロ」や「アヒルと鴨~~」「オーデュボンの祈り」なんかにも
その思想は貫かれていると思いますが、この本でも、父としての尊厳を
守るために、ふだんはいい加減な仕事っぷりの陣内が珍しく世話を焼いたりします。

5篇の短編が年代を前後しながら連なっていく連作集なので、
「どの年代の陣内なのか」を意識しながら読むと分かりやすいと思います。
(初読ではそれがイマイチ掴めず、「????」って感じになっちゃいました^^;)


読み返すたびに味わいと愛着が湧いてくる・・・そんな一冊。
初読だけでやめずによかった!
今では大好きな一冊になりました。
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by marin_star | 2007-10-23 23:23 | 伊坂幸太郎  

アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎・創元推理文庫)

2007年最初の(遅すぎだってば^^;)作品は、
伊坂さんの「アヒルと鴨とコインロッカー」!♪
この作品は昨年5月に単行本を購入してすぐ読んだんですが、
あまりの衝撃に何も書けず(何を書いても言葉が上滑りして
嘘っぽくなりそうで)、
ずっと心に温めていた作品です。
昨年末に文庫になったので、新年イチバンに購入して再読、
今度こそ、レビューにチャレンジです^^;
といっても、たいしたことは書けません。ご容赦ください・・・m(_ _)m


再読するとまた、スゴクよかったです。
もう、ラストは涙ボロボロです・・・
結末が分かっているのにまたこんなにジーンときてしまうなんて。。。
って感じです。
むしろ、2度目だからこそ、いろんな台詞に隠された本当の意味が
ずんずん心にたまっていって、河崎・ドルジ・琴美の3人の物語が
鮮烈に浮かび上がってきます。

引っ越したばかりのアパートの隣人・河崎に巻き込まれるように
本屋を襲撃してしまう僕(椎名)の目線で語られる現在と、
ペット殺しの犯人に付け狙われることになってしまった琴美の目線で
語られる2年前の物語。

この「現在」と「2年前」が交互に語られ、ものすごく緻密な計算のもとに
大きくうねりながらラストへ向かっていく構成が、また素晴らしい。
途中参加の椎名に現在を語らせることで、いろいろな謎が重なって
読者も一緒に「??」と謎解きに夢中になってしまうし、
琴美の行く先が暗示されている中で2年前の物語が語られるので
もう気が気でない。お願いだから何とか回避して!と心で叫びながら
読んでいました。(涙)

ブータン人で生まれ変わりを信じているドルジ、
寝た女の誕生日で365日を埋めるという野望を持つ美貌の持ち主・河崎、
ペットショップ勤務でドルジと暮らす琴美。
この3人のそれぞれの心の痛みや哀しさ、切なさ、生き方に
本当に胸が震えます。

ミステリとしても秀逸です。
初読のときは本当に「えぇっ!?」と驚愕しましたよ。
これは初読で見破れた読者はいないのではないでしょうかね^^;
どの台詞もエピソードも本当に無駄なものは何一つ無いので、
サラッと読み流さずに心して読むことをおススメします。
といっても、どのエピソードも(本屋襲撃もシッポサキマルマリも鳥葬も
動物園もボブ・ディランもアヒルと鴨もクロシバもetc...)
伊坂さんならではの存在感のあるエピソードなので
見逃したりできないですけどね(笑)



文庫版では、琴美の描き方が少し違っていましたね。
ペット殺しと思われる3人への捨て台詞にあれ?と違和感を感じたので
単行本を引っ張り出して確認・・・^^;
その後も気になる場面がいくつかあって、そのたびに確認しちゃったのですが、
ずいぶん改稿していましたね。
私は、身に迫る恐怖をなかったことにしたくて警察を頼れなかった
強がりで臆病な単行本の琴美のほうが好きでした。



第25回吉川英治文学新人賞受賞作
2004年度「このミス」国内第2位 他受賞多数

2007年初夏映画化(濱田岳・瑛太・関めぐみ・松田龍平・大塚寧々)
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by marin_star | 2007-01-16 20:42 | 伊坂幸太郎  

陽気なギャングの日常と襲撃(伊坂幸太郎・祥伝社ノン・ノベル)

もう、絶妙のタイミングでの出版ですね!
「地球を回す」の映画化・公式ブック・コミック化・・と
とどまるところを知らないギャングワールドが増殖中なんですから。
なんて幸せ!!

まず、目次のページを読んだだけで、伊坂ワールド満々で
ワクワクしてきます。
第1章は、「巨人に昇れば、巨人より遠くが見える」とか
「毛を刈ったヒツジには、神も風をやわらげる」といった
外国のことわざがタイトルの4編。
4人それぞれがこのことわざをボソッとつぶやくような
「ギャングたちの日常」が短編風に書かれています。
(もともと独立した短編として書かれたものを
大幅に改稿しているということです。)

ちょっとした事件に立ち会ったりしながら、嘘を見破ったり、
財布を掏ったり、饒舌に演説したり、正確無比な体内時計ぶりを
ちょこっと披露しながら、それぞれに過ごしている4人。
けっこう淡々としながらもスパイスの効いた日常ぶりの中に、
何か起こりそうなワクワクした感じが潜んでいる・・といった雰囲気です^^。

そして第2章以降、「きたきた!」と思わず頬が緩んでしまうような、
ドキドキの展開に。
4人の日常に登場した「ちょっとした事件」が、次々と絡み合って
見事な「襲撃劇」の始まりです!
複雑な伏線やプロットが後から後からどんどん繋がってきて、
連鎖してたたみかけるように展開していきます。
個性派揃いの登場人物たちが思う存分、本領発揮!
これこそ、最強4人組の面白さ!

相変わらずクールな成瀬はカッコイイし、今回特にコンビともいえるほどの
響野と久遠のボケとツッコミ(というより両ツッコミ?)ぶりは
笑いっぱなしの面白さ!
雪子さんは前回の失敗をチクチクと指摘されながらも
今回は余裕のある大人のオンナっぷりです。

前作よりもさらにどんでん返しの連続で、最後の柔道チーム(?)の出現や
南米のネタには大笑い。またしても伊坂ワールドにヤラれてしまいました^^。

クククッと笑ったり、ぷぷっと吹き出したり、ふふふっと笑いがこみ上げたり、
あはははっ!と大笑いしたり。
とにかく楽しめること間違いなし!

会話ひとつひとつが、どれをとっても絶妙なテンポのよさ、
くだらない会話でもいっさいムダがありません。
本当に伊坂さんの作品は会話のセンスが抜群!


それにしても、もともと別々の短編だったものから
こんなに面白い長編を作り上げてしまうなんて。。。スゴイよ、伊坂さん。
4人組に愛着があればこそ、って気がしますね♪

「地球を回す」を未読の方は、読んでからのほうが楽しめます。

やっぱり「地球を回す」の映画も観に行きたいなぁ~。
平日仕事サボって行っちゃうか??^^;
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by marin_star | 2006-05-23 08:06 | 伊坂幸太郎  

重力ピエロ(伊坂幸太郎・新潮社)

文庫化を待てず、図書館で借りました!

伊坂さん、やっぱりミステリとして分類されていると思うんですが・・・・
この作品は、ミステリ的要素もあるにはあるけど、
遺伝子情報の法則なんかは読者が謎解きできるレベルではないので
いわゆる犯人探しとか謎の解明・・・みたいなことよりも
哀しいルーツを背負ってしまった切ない家族の叙情的物語という感じでした。

血のつながり・遺伝子を超えることができるのか?

この大きな命題に向かって、兄・弟・父それぞれの想いが
何年も深く静かに流れ続け、知らず知らずのうちに共鳴するかのように
一点に向かってうねりが大きくなっていく・・・
遺伝子よりも大きな絆・「最強の家族」を証明するために。

派手な展開はありません。犯人探しという意味では意外性もありません。
でも、時に詩人のように、時に韻を踏むラップのように語られる、
なめらかな会話の底には、哀しい遺伝子への挑戦が見え隠れするのです。

ある意味、ハッピーエンドな終わり方にホッとし、胸が熱くなりました。

他の作品の登場人物や「神様のレシピ」といった言葉が出てくるので、
伊坂ファンにはたまらないですね。
文庫化したら絶対買って再読します!
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by marin_star | 2005-09-10 22:45 | 伊坂幸太郎  

陽気なギャングが地球を回す(伊坂幸太郎・祥伝社ノンノベル)

個性的な登場人物と知的で洒落た会話が小気味よく心地よい、
無条件に楽しめる作品です。

嘘を完璧に見抜いてしまう男、饒舌な演説名人、
動物好きな天才スリ、1秒の狂いもない体内時計を持つ女。
この4人の銀行強盗(ギャング)たちの、まあ何と愛おしいこと!

とにかく、彼らの交わす台詞の一つ一つがキラキラと光っていて、
軽快でテンポの良いやり取りに心を奪われてしまいます。
こんな洒落た会話を物語の中に違和感なくすぅーっと溶け込ませて
実に見事に登場人物の個性を魅力的に立たせているスゴさ!
これはもう、伊坂ワールド炸裂です!
用意された小道具たちの笑える使われ方も面白かったし、
エピソードの一つ一つも、なかなか他の作家さんでは出会えない
伊坂さんならでは、という感じが。

展開としては分かりやすい、実にスッキリ明快なお話です。
最後のどんでん返しの連続も、先が読めてしまう感じはありましたが
そうなってくれた安堵感というか、まっとうな展開を喜んで受け入れられました。

普通の人がほとんど出てこない(笑)ので、映画的な感じを受けましたね。
(映画化も楽しめそうです。)
キャラがはっきりしてるっていうか、悪人とそうでない人たちの役割も明確。
なので、
難しいこと考えずに、思いっきり伊坂ワールドを楽しみましょう!
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by marin_star | 2005-08-03 00:06 | 伊坂幸太郎  

オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎・新潮文庫)

150年前から外との交流を絶ち、存在すら知られずにいる「島」と
そこに住む一風変わった住人たち。
ウサギ夫婦、嘘ばかりつく画家、足が悪くて鳥が友達の孤独な男、
島で唯一殺人が許されている島のルールと呼ばれる男・・・。
変人ばかりなのに、なんだか切ない不思議な魅力を持った登場人物たち。
そして人の言葉をしゃべり、未来を知るカカシ ――― 。
ふわふわと現実感のない、おとぎ話のような世界なのに、
なぜか不思議なリアリティにあふれていて、心にすっと沁みこむような感覚が。

個人的には「桜」が、いい。
人間の奥底に粘るように張り付く「悪意」を、問答無用で抹殺する。
大人であろうと、子どもであろうと、残虐な行為・人を弄ぶ歪んだ心を許さない。
短絡的な設定だけど。

なぜ、カカシは未来を知ることができるのに
自らが殺されることを回避できなかったのか?
昔から島に伝わる「この島に欠けているもの」は何か?
このあたりの謎解きがミステリ、ということになるのかもしれませんが、
意外な結末!みたいなミステリを読んでる感覚はまるでなくて、
ミステリというよりもファンタジーなのでは?という感じです。
150年の間に静かに沈殿していったカカシの孤独と絶望。
欠けていたものを見つけた島のこれからの未来。
読み終わってもなお、思いを馳せてしまう余韻のある物語でした。
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by marin_star | 2005-06-14 23:24 | 伊坂幸太郎  

ラッシュライフ(伊坂幸太郎・新潮文庫)

恥ずかしながら全く初めて知った作家さんです。
店頭でかなり平積みされていて、全く別々に進行していく4人の物語が、
あるとき交錯する―――という内容に惹かれて購入。

別々の水源から流れ出した川が大海で一緒になるように、
複数の物語が最後に一緒になって、なだれ込むように
ラストへ向かっていくのかな、(ジェットコースター・ムービー的?)と
思ったら、ちょっと違いました。

自分の信じる美学に基づいて仕事をする泥棒の男、
父の自殺後、信仰していた『神様』を“解体”する青年、
不倫相手との再婚のために殺人を企てる女カウンセラー、
リストラされ再就職もできないのに野良犬を拾ってしまう中年の男。

彼ら4人とその周辺の人々の人生が、あちこちで、さまざまな形で
複雑にクロスしたりニアミスしたりして話が進んでいきます。
時間軸も巧妙にずらされていて、最後まで展開が全く読めず、
本当に最後の最後になって、ようやく全貌が姿を現す、という感じでした。
そう、物語の中にも出てくるエッシャーの騙し絵のような・・・。

不思議な読後感です。
どんな絵柄かもわからないまま、大きなパズルを部分的に組み立てていって、
最後のピースを埋め込んだ途端に絵柄が目に飛び込んできた・・・そんな感じ。

面白い作家さんだと思いました。
ミステリファンの間ではすでに有名な作家さんのようで、
ホントお恥ずかしいですが、他の作品も読んでみたいなぁ~。
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by marin_star | 2005-05-07 23:26 | 伊坂幸太郎