カテゴリ:岡嶋二人( 8 )

 

あした天気にしておくれ(岡嶋二人・講談社文庫)

これは「焦茶色のパステル」で江戸川乱歩賞を受賞した前年に、
同賞に応募して落選してしまった・・といういきさつでも有名な作品ですね。
いつもお邪魔しているブロガーさん始め、いろんなところで
「この作品で乱歩賞を取って欲しかった!」というのを目にしていたので、
かなり期待を持って読みました。

その(かなり大きな)期待を全く裏切らない、面白さでした!!

競馬のことは全く無知な私ですが、
「焦茶色のパステル」は懇切丁寧でちょっと硬めの入門書、
この作品は、独学で学ぶ実地体験版!みたいな感じです。
(分かる?わかんないよね・・・^^;)
なんかね~、すごく勢いがあるんですよね。
本人たちも楽しんで書いているっていうか。。。
たぶん(勝手な想像ですが)、「パステル」は受賞をかなり意識して
マジメないい子ちゃんで書いた作品って感じがします~^^;

専門用語も出てくるけど決して説明的な描写はなくて
物語への興味を全く邪魔しない、
ストーリーに夢中になっているうちにリアルに理解できる、という
素晴らしくよくできた作品です。

超一流の血統馬「セシア」が、牧場への輸送中の事故で脚を骨折。
3億円以上もの値で取引された大事な馬の脚を折った・・と言い出せない
牧場主たちは、セシアが誘拐されたことにして事故を隠蔽する計画を立てた・・・

この誘拐が茶番であることは、物語の最初から分かっているので、
いかにこの誘拐劇を成功させるか・・と奔走する犯人側の
立場になってハラハラドキドキするわけですが、
途中、なぜか彼らの筋書きにない、しかも彼らに有利な証人が現れ、
謎が深まっていく。

このあたり、一筋縄でいかないところがまた上手いですね~。
もう、どんどんのめり込むように読んでしまいました。

やむなく狂言誘拐に加担する朝倉や望月。
彼らの覚悟や苦しみ、切羽詰った息苦しさ、暴かれる恐怖との葛藤、
といった心情がにじみ出てくるような人物描写も上手いです。
自己の利益優先で喧々諤々つばぜり合いをする馬主たちの
愚かな面々も、いるいる!こういうヤツ・・・って感じだし。
何か秘めたものがありそうな響子も魅力的です。
どの登場人物も生き生きと血が流れているリアルな存在感があります。

そして、さらに衆人監視の中で行われる身代金受け渡しのトリック!
このトリックが「先例がある」という理由で乱歩賞を逃したそうですが、
私なんかは競馬ミステリを読まない人なので全く知らないトリックで
へぇ~~~~、こんな方法が!!・・・って、口あんぐり状態でした^^;
あまりにも鮮やかな手口、というか、そのトリックへの描写が鮮やか!

みなさんのおススメどおり、本当に面白い作品でした!!


解説を読んでなるほど、と思ったのですが、
殺人事件が起こらないんですね。
今でこそ、人が死なないミステリもたくさんありますが、
この頃はミステリ=殺人事件、っていうのが当たり前だったのかも
しれませんね。
「江戸川乱歩賞初の無殺人推理小説」・・・受賞して欲しかったですね~^^
[PR]

by marin_star | 2007-02-20 12:30 | 岡嶋二人  

七日間の身代金(岡嶋二人・講談社文庫)

86年の作品。
ある大富豪の後妻の弟と、先妻の息子が誘拐される。
身代金の受け渡しは、先妻の息子が所有する湘南の小さな島。
陸へ続く長い一本橋以外に逃げ場もなく、
周囲の海も警察に包囲された中、
身代金を運んだ後妻は射殺され、犯人も身代金とともに消えてしまう・・・

「人さらいの岡嶋」の異名を持つ岡嶋さんの誘拐モノ・・と思いきや、
密室トリックテンコ盛りのお話です。

警察署長の娘・千秋とその恋人・要之介の二人が、
署長の娘という「職権」を濫用し(笑)、にわか探偵となって
事件の謎に挑むんですが、
父親と、娘の恋人の微妙な関係がうま~く絡んできて
イイ味を出しています。

何重にもトリックが仕組まれていて、面白く読めましたが、
一つ一つのトリックは少し緻密さが足りなかったかも。
犯人も途中で見当がついてしまうので、惜しい!って感じかな~。

あと、ラストに犯人の独白によって犯行の一部始終が語られる・・っていうのが
私としては苦手な終わり方なので、そこも残念。
(だって、犯人があんなに長々と順序だてて全てを説明するなんて・・・
リアリティないでしょ・・?)

やっぱり、これはタイトルからすると誘拐モノのようですが、
ちょっと別物・・って感じでしたね。


それにしても冒頭の、人質となった二人が椅子に拘束された状態で
犯人の要求を代弁するビデオ・・・・
これってイラクの人質事件とかを彷彿させます。
20年も前にこんな強烈なシーンを描いていた岡嶋二人って、スゴイ。
[PR]

by marin_star | 2007-02-20 12:05 | 岡嶋二人  

どんなに上手に隠れても(岡嶋二人・講談社文庫)

84年の初期の作品。
タイトルからはあまり想像できない(笑)、派手な仕掛けが満載の
誘拐モノです。(タイトル、地味ですよねぇ?^^;)

誘拐の舞台は白昼のTV局。
誘拐されるのは、5日後に発売を控えた新製品のCMキャラを努める
売り出し中の若手女性歌手・結城ちひろ。

スポンサーの敏腕宣伝マン、パパラッチ的な週刊誌のカメラマン、
芸能プロダクション、競合のCMクリエイター・・・
いかにもギョーカイっぽい人たちが自分達の利潤・利益・保身のために
絡まり合う中、1億円の身代金受け渡し劇が始まります。

いや~、なかなかみなさん、えげつないです。
特にゼネラルフィルム宣伝部の長谷川。
ちひろの誘拐事件を無料のパブリシティと捉えて利用する狡猾さ&大胆さは
こんな人、ホントにいたら大変だわ・・と思う反面、
広告マンならこんな立場になったら野心がメラメラしちゃうのかも~、とも。

身代金の受け渡しトリックも、幾重にもあっと驚く仕掛けがあって
ヘリが登場したり、いつの間にか身代金が消えていたり・・と、
TVっぽい派手な手口で、地味になりがちな身代金受け渡しのシーンが
映像で見ているような感じで楽しめます。
なにしろ、物語のほとんどはこの「受け渡し」シーン。
言い換えれば、いかに「受け渡し」シーンをエンターテイメントに仕立てるか、
という作品といえるかも。

地道に捜査する矢津刑事がなかなか渋かったですが、
もうちょっと警察も頑張らないとね、って感じはありました^^;
彼が「テレビを逮捕してしまいたい」と思わず口走ってしまう心境は、
よく分かる気がします。

野心家の広告マンが失うものは何も無い状態になったとき、
どう変わっていくのか、というなかなか読み応えのあるサイドストーリーもあり。

一つ残念だったのは、後半に起こる殺人事件。
殺人が起こらない誘拐モノでも良かったんじゃないかなぁ~、と思います。
まあ、それだけあーゆー業界の人は蛇のように執念深く陰湿・・って
ことなのかな。


解説は東野圭吾さん。
暗記するほど繰り返し読んだ名作、と絶賛してました^^
[PR]

by marin_star | 2007-01-24 22:01 | 岡嶋二人  

焦茶色のパステル(岡嶋二人・講談社文庫)

封印中の「おかしな二人」を読むための岡嶋作品その2(笑)。

やはりまずはこれを読まなきゃ、ということで、
事実上のデビュー作ともいえる競馬ミステリのこの作品。

競馬場には昔一度だけ行ったことがありますが、
(それもレースのないとき・・^^;)
全く何も知識の無い私なので、正直競馬ミステリという分野は
読まず嫌いの苦手ジャンルでした。

でもこの作品は、被害者の妻が競馬素人で、
競馬情報誌記者の女友だちとともに事件の真相に迫る・・という形で
展開していくので、かなり読みやすかったです。
単なる殺人事件かと思いきや、競馬界を揺るがす重大な陰謀へと
繋がっていきます。

84年の作品ですが、作品のトリックや展開にもほとんど古さは感じられず、
なかなか読み応えがありました。
ただ、やはりまだあまりこなれてないというか、軽妙な筆致ではなかったので、
あー、初期の作品なんだなぁ~、と(笑)。


第28回江戸川乱歩賞受賞作品
[PR]

by marin_star | 2007-01-16 21:36 | 岡嶋二人  

タイトルマッチ(岡嶋二人・講談社文庫)

久々の岡嶋作品。
井上夢人作品を読んでしまうと、どうも小粒に感じてしまうので、
なかなか購入に至らなかったんですが、「おかしな二人」を購入してしまって
現在封印中なため、また少しずつ読んでみようかな、と。
(「おかしな二人」は岡嶋作品のネタバレ満載なんですよね・・・^^;)

ボクシングの世界タイトルマッチ、二日前。
挑戦者・三郎のセコンドであり義兄にあたる元世界チャンプ・最上の
10ヶ月の息子が誘拐された。
犯人の要求は「タイトルマッチでノックアウトで勝て」。
負け試合を要求する八百長ではない「勝て」という犯人の狙いは何か?

タイムリミットが容赦なく近づく中、捜査は難航、しかも三郎は大事な右の拳を
怪我してしまう大ピンチ。
赤ん坊のわが子を誘拐された最上の苛立ち、不安、犯人への怒り・・・といった
抑えきれない熱い激情、そして憔悴していく妻とのやりとりなんかが、
ものすごく上手いなぁ~、と。
ちょっとした会話に、夫婦間のほろっとさせる信頼感が滲み出てたり。

そして、ただ緊迫しているばかりではなく、クセのある登場人物たちがみな、
ちょっとユーモラスで人間味があってとても魅力的です。
(無意識のうちに最上が吹いていた口笛のメロディが「たんたん狸の~~」
だったり。)
最上はもちろん、怪我をしながらも試合に臨む三郎も、
三郎が挑戦する相手・ジャクソンも、三郎の怪我を治療する女医さんも、
みんないいキャラしています。

そんな素晴らしい人物描写と、タイトルマッチに向けて刻々と迫る
タイムリミットとがものすごく上手く絡んでいて、ピリピリとした緊迫感のある
ストイックなボクシングの世界を舞台にしたこの作品の魅力が、
存分に楽しめたと思います。

ボクシングは普段全然興味のない私でも、裏の世界まで分かりやすく、
犯人の動機や心情もなるほど、と納得がいき、面白かったです。

展開としては、やっぱりね。。。というところもかなりあったり、
犯人の残虐さと甘さのバランスがちょっと悪かったり・・・という
残念なところもあるにはありましたが、
84年の作品という古さを感じさせないところはスゴイです。

業界では「人さらいの岡嶋」と呼ばれるほど誘拐をテーマにした作品の
多い岡嶋さん。もともと「誘拐」ものが好きな私、「99%の誘拐」も面白かったし。
・・・ということで、今後もまずは「誘拐」ものから岡嶋作品を読んでいこうかな^^
[PR]

by marin_star | 2006-11-23 23:00 | 岡嶋二人  

クラインの壺(講談社文庫)

仮想と現実の記憶の区別がつかなくなるほどの、
バーチャルな疑似体験アドベンチャーゲームが秘密裏に開発される。
本当にそんなことが可能なのか?と最初は非現実的な感覚を持って
読み進めたんですが・・・

特殊なスポンジ・ラバーでカラダ全てが覆われ、皮膚の一部のようになり、
実際には握ってもいないものを握っているように感じてしまう・・・
主人公が戸惑い、驚愕しながらもその体験を事実として受け入れていく様が
あまりにリアリティがあって、
夢物語のような設定がどんどん現実味を帯びてきます。

怖いです。
そんなのありえないっ、って思えないところが本当に怖い。
人間の記憶を疑似体験で作り上げてしまうことが可能になったら、
人は何を信じて行動すればよいのか?
帯の『現実も真実も崩れ去る 最後で最恐の大傑作!』という
文句は決してオーバーじゃないと思いました。

*あらすじ*

見るもの・触るもの全てが現実と全く同じ感覚、という
バーチャルなリアリティアドベンチャーゲームが秘密裏に開発される。
ゲームの原作者である主人公は、アルバイトとして雇われた少女と二人で
その画期的なゲームのモニターを依頼されるが、
ある日突然、少女は消えるようにいなくなってしまう。
そしてその画期的な開発の裏には、国家的規模の恐ろしい陰謀が
隠されていた…
  
[PR]

by marin_star | 2005-04-12 12:01 | 岡嶋二人  

99%の誘拐

12年前に起こった誘拐事件、そして今、過去の事件を
なぞらえるように起こったコンピュータに制御された誘拐事件・・・
新たな事件の犯人の正体は早くから明かされるが、
誘拐事件が完全犯罪に終わるのか、また過去の事件の真相は
なんだったのか。。。
計算されつくしたトリック、緊迫感のある展開に引き込まれて手に汗握り、
読み進むうちに、本来憎むべき誘拐犯の成功を祈らずにはいられない。
切なくて、しかもスピード感のある素晴しい作品でした。

*あらすじ*
12年前、小さいながらも時代の最先端技術を誇るイコマ電子の社長の息子が誘拐された。
要求された金塊5,000万円は、アメリカの親会社から独立するために
私財を投げ打って作っていた資金と全く同額だった。
当時の警察の捜査も空しく金塊5,000万円は奪われたが、
息子は無事に帰り、イコマ電子は大手会社リガードに吸収された。
そして12年後、「アスカ」というコンピュータゲームに誘導されて
山中の別荘に閉じ込められた男の子------それは、リガード社長の息子だった。
身代金を要求してきたのは、自らを「誘拐するために作られたコンピュータ・プログラム」と名乗る、コンピュータの合成音で話す女の声だった。。。
[PR]

by marin_star | 2004-09-21 12:43 | 岡嶋二人  

コンピュータの熱い罠

’86の作品の文庫化。現在はコンピュータはさらに進化し、
小学生までもがPCを使いこなすようになって、
ウィルスやワームの脅威も広く知れ渡っているけれど、
この作品が書かれた当時はまだ一般人のPCに対する知識は
少なかったはず。
そんな中でこれだけ面白い作品が書けるのだから、スゴイ。
知識の無い人にも分かりやすい文体で、
PCを使って謎を解き明かしていくストーリー展開を
存分に楽しめるし、、ネット犯罪の怖さも伝わってくる。
この作品は、井上さんが初めてフルイニシアティブをとった作品、と
いうことで、『井上さんはミステリ界でも最もコンピュータに
詳しい人間として有名』と解説にある。納得^^。

*あらすじ*
結婚相談所のオペレータ絵里子は、ある日恋人の名前が登録されていることを
発見し、動揺する。しかも彼のデータは本人が登録していない細かな病歴など
不審なほど詳細にわたっていた。
ある日、結婚相談所で紹介された女と結婚した兄がフィリピンで
不審な死を遂げた、という女性・綾子が絵里子のところへ現れる。
データを調べていくうちに次々と広がる謎と見え隠れする不穏な犯罪の影・・。
そんな中、綾子が何者かに刺し殺され、同僚の古川も殺されてしまう-------。
[PR]

by marin_star | 2004-09-06 12:20 | 岡嶋二人