幻夜(東野圭吾・集英社文庫)

ついに読みました、「幻夜」。
やっと文庫になった~~!って感じですね。

しかし・・・ものすごくレビューが難しいです~。
「白夜行」とどう絡んでくるのか・・というところを書かないと
なかなか語れない部分があるんですよね。

できるだけ致命的と思われるネタバレはナシでいきたいと思いますが、
多少ネタバレありになると思うので、
未読の方は以下お読みにならないようお願いします~。




まず、もろもろ話題のこの作品、正直予備知識はほとんどない状態で
読んだのですが、結果的にそれがよかったかも、という印象です。

阪神淡路大震災の混乱の中で、衝動的に叔父を殺害してしまった雅也。
そしてそれを目撃していた美冬。
二人は被災した大阪を離れ、東京で密かに「二人の幸せ」を求め
悪事に手を染めていく。
美冬の指示のまま罪を重ねる日陰の存在の雅也、
「二人の幸せ」といいながら一人のし上がっていく美冬 ――。
そして、彼らを執拗に追う刑事・加藤。

これはまさに、「白夜行」の雪穂と亮司の構図です。

ただ圧倒的に違うのは、美冬と雅也の関係。
雪穂と亮司はある意味対等であり、
強い絆が確かにあったと私は思っていますが、
美冬にとって雅也は利用するだけの男。
彼を従順な下僕として育てるために、冷酷非道な犯罪を強いて
忠誠を誓わせる美冬。
不満・不安、そして苦悩を抱えながらも美冬のいいなりになる雅也・・・。

「白夜行」では決して語られなかった主人公二人の心情ですが、
この作品では、彼らの心情も含めて物語が語られていきます。

東野さんは「白夜行」を書いたときに、
すでに「幻夜」の構想があったのでしょうか。
主人公の心情を徹底的に排除した作品を、次の作品で別の側面から描く・・
という構想がもともとあったのか。
それとも「白夜行」で理解しにくかった世界を、
違った手法で分かりやすく描こうとした「白夜行」ありき、なのか。

私としては、
「白夜行」の世界観の凄まじさは圧倒的に素晴らしいと感じているので、
この「幻夜」という作品をなぜ東野さんがこの世に送り出したのか・・・
それがとても気になります。


そんなことを考えながら読み進めていくと、
最後には「あっ・・・そうだったのか。」という瞬間が。
予備知識のなさがむしろよかった・・と思ったのはこの瞬間です。
文庫で770ページを超える大長編を、
けっこう悶々とした感じで読み進めていた私にとって、
「やっぱり東野さんはスゴイ」と再認識させられた瞬間でした。

いろいろと予備知識があって読むとまた違った読み方ができると思うので、
時間のあるときに2作品続けて再読してみたいです。


「幻夜」を単独の作品として評価するならば、
残念ながらそれほど好きな作品ではありません。
でも「白夜行」ファンとしては、
読まなければ!という作品であることは確かですし、
「白夜行」を読んでいるからこそ膨らんでくる「幻夜」の世界が
あることも確かです。


解説には、「白夜行」三部作について
東野さんが「もちろん頭においている」と答えています。
完結篇、あるんでしょうかね。
読みたいような、読みたくないような・・・
いや、でも作品化されたら絶対読みたいですね!
その際にはやっぱり雪穂と亮司の真の絆が
鮮やかに蘇るようなラストを期待したいです。
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by marin_star | 2007-04-10 08:30 | 東野圭吾  

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