あした天気にしておくれ(岡嶋二人・講談社文庫)

これは「焦茶色のパステル」で江戸川乱歩賞を受賞した前年に、
同賞に応募して落選してしまった・・といういきさつでも有名な作品ですね。
いつもお邪魔しているブロガーさん始め、いろんなところで
「この作品で乱歩賞を取って欲しかった!」というのを目にしていたので、
かなり期待を持って読みました。

その(かなり大きな)期待を全く裏切らない、面白さでした!!

競馬のことは全く無知な私ですが、
「焦茶色のパステル」は懇切丁寧でちょっと硬めの入門書、
この作品は、独学で学ぶ実地体験版!みたいな感じです。
(分かる?わかんないよね・・・^^;)
なんかね~、すごく勢いがあるんですよね。
本人たちも楽しんで書いているっていうか。。。
たぶん(勝手な想像ですが)、「パステル」は受賞をかなり意識して
マジメないい子ちゃんで書いた作品って感じがします~^^;

専門用語も出てくるけど決して説明的な描写はなくて
物語への興味を全く邪魔しない、
ストーリーに夢中になっているうちにリアルに理解できる、という
素晴らしくよくできた作品です。

超一流の血統馬「セシア」が、牧場への輸送中の事故で脚を骨折。
3億円以上もの値で取引された大事な馬の脚を折った・・と言い出せない
牧場主たちは、セシアが誘拐されたことにして事故を隠蔽する計画を立てた・・・

この誘拐が茶番であることは、物語の最初から分かっているので、
いかにこの誘拐劇を成功させるか・・と奔走する犯人側の
立場になってハラハラドキドキするわけですが、
途中、なぜか彼らの筋書きにない、しかも彼らに有利な証人が現れ、
謎が深まっていく。

このあたり、一筋縄でいかないところがまた上手いですね~。
もう、どんどんのめり込むように読んでしまいました。

やむなく狂言誘拐に加担する朝倉や望月。
彼らの覚悟や苦しみ、切羽詰った息苦しさ、暴かれる恐怖との葛藤、
といった心情がにじみ出てくるような人物描写も上手いです。
自己の利益優先で喧々諤々つばぜり合いをする馬主たちの
愚かな面々も、いるいる!こういうヤツ・・・って感じだし。
何か秘めたものがありそうな響子も魅力的です。
どの登場人物も生き生きと血が流れているリアルな存在感があります。

そして、さらに衆人監視の中で行われる身代金受け渡しのトリック!
このトリックが「先例がある」という理由で乱歩賞を逃したそうですが、
私なんかは競馬ミステリを読まない人なので全く知らないトリックで
へぇ~~~~、こんな方法が!!・・・って、口あんぐり状態でした^^;
あまりにも鮮やかな手口、というか、そのトリックへの描写が鮮やか!

みなさんのおススメどおり、本当に面白い作品でした!!


解説を読んでなるほど、と思ったのですが、
殺人事件が起こらないんですね。
今でこそ、人が死なないミステリもたくさんありますが、
この頃はミステリ=殺人事件、っていうのが当たり前だったのかも
しれませんね。
「江戸川乱歩賞初の無殺人推理小説」・・・受賞して欲しかったですね~^^
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by marin_star | 2007-02-20 12:30 | 岡嶋二人  

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