僕たちの戦争(荻原浩・双葉文庫)

あー、こういう語り方もあるんだ~、さすが荻原さん。

現代に生きるフリーターでサーファーの健太と
敗戦直前の1944年に生きる軍国青年・吾一が時空を超えて
入れ替わってしまった!

現代っ子で何をやっても長続きせず、
嫌なことがあると波乗りに逃げてしまう健太と、
お国のために戦うため戦闘機乗りを目指して航空隊に所属していた吾一。
この二人が、ある日突然入れ替わり、それぞれおかれた境遇の中で
健太が吾一を、吾一が健太を演じながら、成長していくお話です。

「いくら勉強を怠けていたからといって日本が戦争に負けることは知っている。」
負けると分かっている戦争に命をかけなければならない状況に
追い込まれた健太。
タイムスリップ直後こそ「ドッキリに決まってる」と決めつけて笑ってすまそうと
必死になったり、物静かで控えめな文子の態度にいちいち色めきたったりと
イマドキの若者っぷり全開で笑わせてくれますが、
海軍航空隊の厳しいしごきにあったり、特攻隊に任命されたり、と
どんどん冗談ではすまされない厳しい状況に・・・。

一方、負けるはずがないと信じていた日本の敗戦を歴史の本で知り、
敗戦を迎える前に元の時代に戻って、敗戦を回避しなければ・・と
使命に燃えるが、健太の恋人・ミナミにどんどん惹かれていってしまう吾一。
さらに、物があふれかえり、贅沢をし、喧騒に満ちた生活、
節度のない若者たち、未成熟な大人たち。。。
そんな現代の日本を目の当たりにした吾一は、
自分が命をかけて守ろうとした国の将来はこんなものだったのか?と
愕然とし、空しさを感じてしまう。

敗戦・復興・近代化・バブル・・・と繋がってきた時代を知っている私たちには
目をつぶりたい気持ちもありつつ、なるべくしてなった現代の姿、と
ついつい思ってしまうけれど、
タイムスリップしてきた吾一の純粋な目には
あまりにも哀しい日本の姿だったに違いありません。

二人の目を通して、戦争の浅はかさや愚かさ、
守るべきものとは何なのか、という重いテーマが、
笑いあり&涙アリのユーモアあふれる荻原節で
ごく普通の日常生活のように語られ、すーっと心に入ってきます。

戦争モノってけっこう苦手なジャンルなんですが、
これは全然違和感なく、ラストまでグイグイ読んでしまいました。

ラストは、もうちょと続きを読みたかったな~、と思わせる終わり方で、
いろいろと想像するのも、また楽し。というところでしょうか。
(でも、やっぱり健太と吾一のその後がとっても気になる!)
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by marin_star | 2006-08-26 00:08 | 荻原 浩  

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