殺人の門(東野圭吾・角川文庫)

なんと表現したらよいのか、非常に難しい小説でした。

お手伝いさんを雇うほど裕福な歯医者の息子、田島。
小学生の頃から地道に働くことより大きく儲けることに執着していた倉持。
この二人の小学生時代から青年期まで延々と続く因縁を
克明に丹念に綴っていく、地味といえば地味な物語です。

「あいつを殺したい」 ―― 多くの人間が願望のみに踏みとどまる
一線を踏み越えてしまうものは何なのか。
田島は、ささやかな自分の幸せを瓦解させ翻弄する倉持に殺意を抱くが、
口の上手い倉持の前に殺意は増幅したりしぼんだりを繰り返し、
その一線を越えることができない。

田島という男は、はたから見てもお人よしで、
意志が弱く、流されやすい、懲りない男。
なんでそこでまた騙されるかなぁ~…と思う場面が
何度も出てきます。
女にも免疫がなさすぎて、すぐにのぼせ上がっちゃうし。
言い訳を聞かされれば、すぐにコロッと言い含められちゃうし。

でも、こういう騙されやすい弱い人間って確かに存在すると思う。
そんな弱い男を、思うがままに「捨石」にしてまとわりつく倉持のような男も
たぶんたくさん居るんだろう。
そんな歪んだ因縁と、増幅したりしぼんだりを繰り返す殺意の行方を、
丹念に淡々と、しかし力強く描いている力作だと思います。

派手な展開はないけれど、なぜか読むのを止められない、
そんな作品でした。

ただ、解説にあったようなラストに登場する男の台詞や「友情」という言葉は、
まったく理解できませんでした。
田島と倉持の間には、歪んでいたにしろ「友情」なんかなかったでしょ。
あったとしたら、倉持の一方的な支配欲。
「田島のお人よしな性格は自分の予想の範疇を超えない」っていう程度の
信頼(?)みたいなものはあったと思うけど、
それを「歪んだ友情」というのはどうかなぁ?と思う。
他人の人生を手中に握ることでしか満足を感じられない男に目を付けられ、
いいように振り回されて憎悪と殺意に揺れ動く哀れな男の話、と
感じられました。
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by marin_star | 2006-07-06 09:16 | 東野圭吾  

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