オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎・新潮文庫)

150年前から外との交流を絶ち、存在すら知られずにいる「島」と
そこに住む一風変わった住人たち。
ウサギ夫婦、嘘ばかりつく画家、足が悪くて鳥が友達の孤独な男、
島で唯一殺人が許されている島のルールと呼ばれる男・・・。
変人ばかりなのに、なんだか切ない不思議な魅力を持った登場人物たち。
そして人の言葉をしゃべり、未来を知るカカシ ――― 。
ふわふわと現実感のない、おとぎ話のような世界なのに、
なぜか不思議なリアリティにあふれていて、心にすっと沁みこむような感覚が。

個人的には「桜」が、いい。
人間の奥底に粘るように張り付く「悪意」を、問答無用で抹殺する。
大人であろうと、子どもであろうと、残虐な行為・人を弄ぶ歪んだ心を許さない。
短絡的な設定だけど。

なぜ、カカシは未来を知ることができるのに
自らが殺されることを回避できなかったのか?
昔から島に伝わる「この島に欠けているもの」は何か?
このあたりの謎解きがミステリ、ということになるのかもしれませんが、
意外な結末!みたいなミステリを読んでる感覚はまるでなくて、
ミステリというよりもファンタジーなのでは?という感じです。
150年の間に静かに沈殿していったカカシの孤独と絶望。
欠けていたものを見つけた島のこれからの未来。
読み終わってもなお、思いを馳せてしまう余韻のある物語でした。
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by marin_star | 2005-06-14 23:24 | 伊坂幸太郎  

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